2月28日「志遠〈チウォン〉歌い語り
私たちの思いを歌声にのせて〜民族差別・排斥に抗するための集い〜」に参加して


金ソッセさんの講演
 2月28日午後大阪市内で、民族差別・排斥に抗するための集い「志遠〈チウォン〉歌い語り」(リブ・イン・ピース☆9+25主催)が開催され、参加しました。
 志遠〈チウォン〉とは、大阪朝鮮高級学校の卒業生である30代の金(キム)ソッセさんと20代の愼祥訓(シン・サンフン)さんのお二人によって結成されたデュオの名前です。
 この集いには50人近くが参加しました。金さんの方からどんな気持ちで歌が作られたかというお話があってから、お二人で歌を歌われたので、とても深く心に響きました。それぞれの歌詞とメロディーが調和して参加者の気持ちがグッとつかまれました。生で聴けてとても感動的でした。
 歌とは対極をなす「在特会」の朝鮮学校への乱暴な振る舞いと脅しの様子のビデオが上映され、参加者の驚きと憤りと恥ずかしさを呼び起こしました。
 金さんから「現在の朝鮮学校は国家からも自治体からも、どこからも助成金は受けてなくゼロの状況で、学校のガラスも割れたまま、夏は暑く、冬は寒い環境下で子供達が勉強をしてる。少子化に輪を掛けて財政難で先生のお給料も半年も出ないことは常であり、それを補うためにカンパをしてる。」と聞き「在特会」が言っている「特権」なんていったいどこでどのように受けてるのかと思いました。今、鳩山政権が進めようとしている学校の無償化政策の対象から朝鮮学校を外そうとしていることは「在特会」のふるまいとどこが違うのでしょうか。
 「政治家とかが暴言を吐くのは、近代史、歴史教育がされていないから。昔の右翼は論破するのは難しかった。が、今の「在特会」は自分たちのフラストレーションを社会に向け、弱いものをいじめている。危険だ。」あわせて「その行動を国と行政は見て見ぬふりをしている。言論の自由があれば差別は許されるのか?国と行政に対して怒りがわきます。」北朝鮮がミサイル発射の時にチマ・チョゴリが切られるという「目に見える差別が見えなくなっていたのに、再び見える差別に変わっていっている」など金さんのことばはとても静かな口調で印象的で感慨深いものでした。 
 歌は、チウォンが作詞作曲をした5曲が歌われました。金さんのお話では、朝鮮学校というと思想教育がなされているというイメージがあるかもしれないが、たしかに金日成・金正日親子の写真は飾られていたものの、そこにあるというだけで級友の中には金日成を呼び捨てにしている人もいたというくらいだということでした。歴史においては「日帝」の朝鮮侵略が教えられましたが、反日というより祖国統一を願う教育がされてるとのことでした。全体のカリキュラムも、朝鮮語の科目がある以外はほとんど日本の学校と変わらないことが話されました。ただ日本の学校と違うのは、いわゆる「進学校」などはなく、勉強の得意な人苦手な人、スポーツが得意な人苦手な人がみんな一緒に支え合いながら学び生活していることです。そうした朝鮮学校のことが、“あの日のように”という祖国統一を希求する歌や“旅立ちの日 両親へ”という歌に表れていました。金さんは貧しい中で4人の子どもを朝鮮学校にやってくれた両親への深い感謝を口にしていました。
 そして、“マスコミ応援歌”を歌った時は、マスコミのひどさについて語られました。「情報が統制されていて思ったことを言うと摘まれる。生き残りに必死で言論の自由がない」と。つくづくマスコミのジャーナリズム精神のなさと、異常さを感じることが多くなりました。
 “トッコー”という歌は、安倍政権時代、あるおばあちゃんが北朝鮮に行くときに肝臓疾患のために飲んでいた薬を持参したが、その薬が北朝鮮の生物兵器の開発に転用できるいったスパイ容疑が掛けられ、ある朝突然50人もの警官・機動隊がそのおばあちゃんの家に押し寄せてきて家宅捜査までされた出来事が元になっています。北朝鮮に渡航した人や朝鮮総連関係の人に対して微罪やほとんど言いがかりのような罪をでっち上げ、そのたびに何十人もの警察官を動員し、マスコミも大きく報道しました。警官が捜査に来た時、関係者もまだ何の容疑かわからないうちにマスコミがすでに現場に来ていたという話を聞いて驚きました。警察がマスコミに情報をリークしていたのでした。
 ”鎮魂歌”、日本軍に無理矢理捕まえられて性奴隷にされた幼い少女の思いを歌にした歌は、とりわけ胸を打ち、涙する人もいました。
 最後に、朝鮮初級学校の写真映像をバックに“子供たちよ これがウリハッキョだ”という長く歌い続けられてきた歌が披露されました。ウリハッキョとは私たちの学校という意味です。
 本当に感動の歌とお話をありがとうございました。またこのような機会があることを願ってます。

2010年3月6日
リブ・イン・ピース☆9+25


アンケートに答えていただいた参加者の感想

 とてもすばらしい歌声と人間性あふれるお話で、気持ちのいい時を過ごすことができました。日本による植民地支配と強制連行を根源としていることには直接触れないお話でしたが、ひとつひとつのお話すべてに、その歴史の重さを感じながら聞きました。

 こんなに深いメッセージ性のある歌が聞けるとは思わず、またまた考える機会をいただいたと思います。今後の活躍期待しています。

 このような会に初めて参加させていただきました。いろいろな歴史があり、そして現代における問題、学びを深めるきっかけとなりました。ありがとうございました。これからもがんばってください。

 これほど感性の合う歌とは久々に巡り会えた。もっとも気に入ったのはJapanese Masmedia。そして歌声がとても綺麗。

 すばらしい歌と語りでした。ありがとうございました。

 若い人の話や歌に接する機会を得たことはよかったと思います。チウォンについて「汚い言葉に対して美しい歌で応える」のが良いのではありませんか。「旅立ちの日 両親へ」や「あの日のように」のような歌の方がうけつがれるのではないでしょうか。
 日本の官憲がつけねらっているのは当たり前で、彼らにはどんな言葉も伝わらないのですから、伝わる人の方に向くのが生産的だと思います。

 とても良かったです。友達と一緒にこれてこのときを共有できました。少しでもいろんな人と考えていきたいと思います。在日朝鮮人の問題は強制連行や日本軍「慰安婦」の問題と根は同じです。マスコミに抗して私たちも真実を伝えていきましょう。

 「旅立ちの歌」すてきです。今の日本で親との距離をこんなにまっとうに歌える若者がいないことをあらためて思います。
 映画「ウリハッキョ」もすてきでした。無償化から除外するという民主党政権に私のできる形で抗議していきたいと思います。鳩山首相もこの映画を観るべきです。志遠のお二人のこれからの活躍を期待しています。

 歌はとてもよかったです。
 日朝双方のお話や実情、思いを聞かせてもらって、大変良かったです。朝鮮学校への授業料無料化の問題、どのようにすすめたらいいのでしょうか。金ソッセさんの白いワイシャツ姿がとても新鮮でした。

 無知につけこみ恐怖をあおるマスコミと政治、日本社会の歪みが君たちや幼い子供にまで不当な圧力を加えている。それを許しているのは私たちだ。連帯しましょう。

 今日はとてもすてきな集会をありがとうございました。志遠さんにはぜひ茨城にもきていただく機会を作れたらと思っています。

 チウォンの歌はそれぞれメッセージが込められていてとても印象に残りました。マスコミ批判、警察批判の歌詞は視点が鋭いと思いましたし、鎮魂歌は元「慰安婦」の事実や気持ちに寄り添った美しくも悲しい名曲だと思いました。
 講演では日本社会の在日に対する様々な差別や弾圧の事実がいろいろ話され、自分も知らなかったことがあったので、恥ずかしい気持ちになりました。在特会や彼らを支える者たちにまず“己を恥じよ”と怒りを込めて言いたいです。

 かなり普通の子という感じのチウォンの二人。「あぁそうなんや」という感で、少し意外でした。でも、あまり普通を強調する必要はないようにも思います。歌は良かったです。ただ、「トッコー」の箇所はひっかかりました。「キャパのオネエサン」をマイナスイメージで使っているように思えるからです。

 自然で率直な語りと気持ちのこもった歌で、人としての連帯を強く感じました。

 はじめの在特会のビデオはこれでもかという感じで、つらかったですが、そのあとの歌と話はとても良かったです。ありがとう。