1月14日「ハルモニの唄――在日女性の聞き取りをして 川田文子さん講演会」報告

 1月14日、リブ・イン・ピース☆9+25主催で「ハルモニの唄――在日女性の聞き取りをして 川田文子さん講演会」を開催し、約60名の方に参加していただきました。
 川田さんは今、在日朝鮮人一世のハルモニ(おばあさん)たちの聞き取りをされています。そこで出会った多くのハルモニたちのお話をしていただきました。
 ある方は、5歳の時にたった一人で玄界灘を越えてきました。親戚のいる無事に日本にたどり着けるように、親が白いチマチョゴリに行き先や経路をびっしり書いて送り出したのだそうです。朝鮮人は関釜連絡船には渡航証明書がないと載せてくれないので、皇国臣民の誓詞を諳んじ、乗せてもらったと……今でもその誓詞は一字一句間違えることなく覚えていると。5歳の子どもが単身日本に渡るその心の内は、ちょっと想像を超えています。
 その人は東京大空襲に被災しました。一緒に手をつないで逃げていた同胞が、焼夷弾の直撃を受けて亡くなりました。東京大空襲で亡くなった朝鮮人の人数は推定でしかありません。日本に親戚縁者がいる日本人と違って、その人が逃げ惑い亡くなったことは一緒に逃げた人しか知りません。おそらく亡くなった人の親きょうだいは、そこで死んだということを知りようがありません。非常にショックを感じるお話でした。
 本当にたくさんの人のお話を伺いました。皇民化政策が推し進められていたために、警官の手によって白いチマチョゴリに炭を塗られた人の話とか、結婚した男の暴虐に耐え一生懸命働いてきた人生とか。そういう、名もなき人の記憶の集積が歴史なのだと、改めて思い知らされました。
 そういうことを思うと、右翼的な人、民族排外主義に染まった人は、なんて歴史をつまらないものとして理解しているのだろうなあと思います。弱い者の声を聴き取り、遺すことが川田さんの仕事です。そういう声を歴史に刻んでこそ、日本は差別がなくて他人をちゃんと思いやれる、よりまともな社会になるのだと確信しました。
 川田さんのお話は、出来事としては知っている話も多かったのですが、ひとつひとつに驚き、胸にしみました。それは、知っているというだけでは、皮膚感覚、体得した感覚にはならないからだと思います。 もっと知らなくちゃいけません。もっともっと皮膚感覚を研ぎ澄まし、知識ではなく実感としてこの社会を捉えられるようにしなくちゃいけない……そんなふうに思いました。

2013年1月21日
リブ・イン・ピース☆9+25






アンケートに寄せられた感想

 アンケートに寄せられた感想を、一部ご紹介します。

○様々な在日女性の生き様にふれることができてとても良かったと思います。今後「世界」の方も読ませてもらいたいと思います。

○これまで「慰安婦」問題についてとりくんできました。なのでハルモニのイメージで初めはきいていましたが、あらためてこのような視点からも考えること、学ぶことが大事だと思いました。私は40代ですが在日2世です。父からもっといろいろ話をきいておけばと思いました。終戦前後の在日朝鮮人の「くらし」がたいへんよくわかりました。朴鳳礼さん、すごく奇跡的な生き様ですね。「運がいい」というひとくくりでなく、生かされたんだなーと思いました。東京大空襲、原爆…日本人が被害といっていることには間違いないですが、そこには在日もいて同じ目にあっているという事実。その時、その後、どのようになったのか。これからの歴史歪曲の方向にすすめさせないためにもしっかり学んでいきたいと思います。2日つづけての講演おつかれさまでした。

○知人の韓国人女性もよく働くバイタリティーあふれている方ですが、今回の講演の女性たちもよく働く方たちだと思いました。また、日本人や夫たちからの暴力?を受けながらも力強く生きてきた姿がスゴイと思いました。

○川田さんのお話を聞くのは3回目ですが、とてもとてもよくわかりました。本当にありがとうございました。私自身は広島が専門で、(と言ってもそれほど勉強はしていませんが)、広島の方にお話を聞く機会は多いのですが、唯一つの願いは、一日でも多く生きていて欲しいということです。今日、お話を聞いた方も全く同じ気持ちです。一日でも多く生きていて欲しいです。

○貴重なお話ありがとうございました。戦争が一人一人にどう刻まれているのか考えさせられました。お話の内容、私の心の中に大事にしまいたいと思います。

○川田さんが語る在日で生きてこられた方々のお話はどれも貴重で日本の隠されている歴史の証言です。川田さんのハルモニにむけられるあたたかいまなざし。一人ひとりの歴史は、とても重く厳しいはずなのにスライドに向けられたハルモニのお顔はどの方もすてきな笑顔です。川田さんとハルモニのつちかっている信頼。厳しい内容なのに、なぜかほっこりあたたかい気持ちになりました。ハルモニが語ってくれた史実を胸にしっかりきざみ、私達は日本が行ってきた事実に目を向けていかなければと思いました。川田さんの姿勢を学びたいと思います。

○こういう取り組み(在日女性御一人御一人のお話をきき、記録に残していく)が、本当に必要な今、ずっと続けてこられた川田さんに尊敬の念を深く感じました。すばらしいお話ありがとうございました。宋さんの笑顔の写真を見てほっとしました。

○おはなしをきけてとてもありがたく思います。企画と川田さんに感謝しています。

○直接聞き取られた川田さんの言葉の重みを感じます。宋さんの近況を報告していただき、ありがとうございます。「世界」を読んでみます。

○在日女性の聞き取り、幼い時を思い出しながらウンウンと思いながら、そしてしらなかったとこなど解りやすく聞きました。まだまだ学ぶことが沢山あると感じました。少しずつ学習します。ありがとうございます。

○最初にペポンギさん、東大阪のサランバンのハルモニの話の際に、「日本人の貧困と次元が違う」と言われましたが、その言葉をも越えた生々しい話をわりわりと聞いて、胸の底に深くしみました。

○川田さんの講演会「ハルモニの唄」は、仕事の都合上厳しい日程でしたが、無理して行ってほんとに良かったと思える内容でした。
川田さんのお話で紹介されたどのハルモニの人生も、身近で真に迫るもので、ひとつひとつのことすべてが心に響いてくるものを持っていました。
「次元の違うほどの貧困」という現実のすさまじさ、「文字の洗礼を受けない人々の価値観」に感動するすばらしい感性、「在日の女性が結婚してからも夫から受ける性暴力」その元での生活と生きざま……
どれもこれも胸に突き刺さっています。
また気取らないありのままの川田さんのお人柄がにじみ出ていて、 講演会を人間味のあふれるものにしてくれたと思います。とくに、「詳しいことは忘れたわ」というそういうモタモタ感も、時の流れを物語っているようでもあり、良いなぁと思いました。
いろんな気持ちを感じながら聞き入ってしまいました。最後の宋神道さんの震災の時の写真とその後の写真が映された時は、胸が一杯になってしまって、思わず涙があふれてしまいました。そして今、宋さんが「幸せだ」と言ってくれてることにも、気持ちが揺さぶられてしまいます。