北朝鮮に対する露骨な戦争挑発法――
臨検特措法を成立させてはならない!

 政府は7月7日午後、「北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案」(臨検特措法案)を閣議決定し、国会に提出した。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)籍船を追い回し、船舶検査(臨検)を強要するというきわめて危険な法律である。臨検とは、国際法で規定された戦争行為である。日本政府はこれまでも、交渉の破壊、国連非難決議工作、経済制裁と禁輸措置など北朝鮮に対してさまざまな敵対行為を繰り返してきたが、平時において北朝鮮を標的に直接的軍事挑発を伴う法律を国会に提出するのは初めてのことである。このような法律が成立すれば、それだけで北朝鮮に対する重大な軍事挑発行為となる。絶対に成立させてはならない。
 臨検特措法案は、安保理決議1874(6/12採択)をもとに、「特定貨物」(武器等)を積載していると“認めるに足りる相当の理由があること等”を根拠に北朝鮮籍船舶に対して臨検活動を行うことを可能とする法律である。まさに一方的な経済制裁・禁輸措置を軍事力によって実現しようというものに他ならない。
 海上保安庁が臨検活動の主体とされているが、海上保安庁は諸外国では軍隊として扱われる実力組織である。しかも「海保のみでは対応できない特別な場合」「警備その他の所要の措置をとる」などと、極めて曖昧な表現で自衛隊の船舶検査への関与を認めている。米軍の衛星が船影を補足し、自衛隊が情報を共有し追尾、海上保安庁が臨検を行うという、三位一体で北朝鮮船舶を追い詰める危険な行為が行われる。つまりこの法律は、米軍、海上保安庁と自衛隊が一体となり、役割分担をしながら、北朝鮮籍船舶を強制検査するための法律なのである。それは集団的自衛権の行使につながる。
 さらに危険なことは、任務遂行のための船体射撃=武力行使を認めたソマリア沖の海賊対策=「海賊対処法」が、そのまま対北朝鮮臨検活動に適用されてしまう可能性があることだ。現に右翼マスコミや自民党の一部議員からそのような声が出ている。停船命令を相手船が拒否した場合どうするのか、武力で威嚇することで無理矢理検査を飲ませるのか。単に射撃をすることだけが威嚇ではない。護衛艦や対潜哨戒機P3C、海保巡視艇が小さな船舶を取り囲んで検査要請をすれば、十分に脅威を与えるだろう。相手船が威嚇と捉えて武力抵抗してきたらどうするのか。自衛艦や巡視艇は「正当防衛」のために武力行使に踏み切るのか。――このように、主体が海上保安庁であろうと海上自衛隊であろうと、臨検活動は武力行使と軍事衝突へエスカレートする覚悟なしに行うことは不可能なのである。
 民主党の鳩山代表は早々と、今国会での成立を容認する方針を表明した。「海上保安庁主体という点に関しては反対する立場ではない」などと語っている。マスコミや政府がさんざん煽ってきた「北朝鮮の脅威」が国民に浸透しているから「臨検特措法」に反対したら票にならないとでもいうのであろうか。国会承認問題でお茶を濁してはならない。
 日本共産党は、「現行法で対応できる」という解説(しんぶん赤旗電子版7/8)を出した。政府はすでに経済制裁をやっているのだから、自衛隊まで出す必要はないと、海保による臨検活動にとどめるよう主張しているだけだ。これは反対ではなく、臨検活動を奨励するものだ。結局、日本政府がこれまで行ってきた対北朝鮮敵視政策全体――交渉破壊と制裁、軍事挑発――を認めてしまっている。
 海保であろうが、自衛隊であろうが、臨検活動が戦争挑発行為であることに変わりはない。わたしたちは、対北朝鮮制裁を決めた国連安保理決議1874に反対である。一切の制裁措置をやめるべきであると考える。重要なことは、誠実な交渉と対話によって、北朝鮮に対して働きかけていくことだ。
 すでにかなり危険な状況が生まれている。米韓両政府は6月、「核の傘」の提供に関する首脳合意文書を交わしている。日米政府も、「有事の核の傘」について今月中にも初協議を行うという。また韓国政府は同じく6月末「先制攻撃」を盛り込んだ「国防改革基本計画」を発表している。日本が北朝鮮への直接的軍事挑発を意味する臨検特措法を制定するようなことになれば、東アジアでの軍事緊張を一挙に高めかねない。
 先にも述べたように、与党だけでなく、野党も含めて、この前代未聞の戦争挑発法に対してまともに反対しようとしていない。日本の制裁と強硬姿勢、挑発行為こそが朝鮮半島と東アジアの脅威を煽っているという事実を明らかにし、政府・マスコミ一体となった北朝鮮バッシングを跳ね返していく世論が必要である。
 臨検特措法を絶対に成立させてはならない。

2009年7月8日
リブ・イン・ピース☆9+25

[リブインピースブログより〜北朝鮮バッシングに抗して]
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