自衛隊の南スーダンPKO派遣をやめよ
PKO五原則見直し反対
  

 野田政権は11月1日午前中の閣議で南スーダンPKO(国連平和維持活動)派遣を決定した。一川防衛相は午後防衛会議を開き、派遣準備を自衛隊に命令した。報道では、年明け以降に先遣隊として陸自中央即応連隊約200人を現地入りさせ、5月ごろに施設部隊約320人を順次派遣するというのが政府の方針だ。陸自の中央即応連隊は、米陸軍キャンプ座間に司令部を移し、米陸軍と一体の動きをとれるようにした部隊である。私たちは政府のこの無謀な決定に強く抗議する。
南スーダンPKO派遣を正式決定 野田政権、年明けにも(朝日新聞)
南スーダンPKO:陸自施設部隊の派遣準備指示…防衛相(毎日新聞)

 南スーダンは、7月にアフリカのスーダンから独立したばかりの国だが、欧米諸国の石油利権に絡んで紛争のただ中にある。10月29日にも、北部ユニティ州で大規模な戦闘が発生し100人を超える死傷者がでている。反政府武装勢力「南スーダン解放軍(SSLA)」は国連と住民に対して3日以内に退避するよう通告した。またスーダンとの国境、北部地域でも紛争が続いている。31日には、スーダン南部の南コルドファン州で大規模戦闘が起こり、数百人の死者が出たという。8月には東部で戦闘が勃発し約600人が犠牲になっている。南スーダンは紛れもなく戦地である。
南スーダン北部で戦闘、75人死亡(読売新聞)
陸自派遣予定の南スーダン、戦闘で80人死亡 反政府勢力と衝突(産経新聞)
South Sudan rebels warn U.N., residents to leave border state before attacks(CNN)

 紛争地、戦地に自衛隊をPKOで派遣することは認められていない。自衛隊派遣に関してPKO5原則で厳しく規制されている。まず第一の前提である「(1)紛争当事者の間で停戦合意が成立していること」がすでに破綻している。現に攻撃が加えられ多くの死傷者が出ている。さらに「(2)紛争当事者によるPKO派遣への合意」が破綻している。武装勢力が国連と住民に退避通告を出している。
 野田首相は、戦闘があった北部のユニティ州が、自衛隊派遣が検討されている南部の首都ジュバとは「500キロ離れているから問題ない」と言っているが、PKO5原則に“紛争地から離れていれば派遣してもよい”というような規定はない。南スーダンは内戦が続き、いつどこで戦闘が勃発するかわからない。全国へ紛争が拡大しようとしている。
※PKO参加5原則(外務省)
(1)紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
(2)当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
(3)当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
(4)上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。
(5)武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

 民主党の前原政調会長は、自衛隊の海外派兵における武器使用緩和に言及した。10月30日民主党執行部は、「自衛隊が活動しやすい態勢を整える必要がある」として、PKO参加5原則の武器使用の項目を変更することで派遣条件を整える意向を示した。現在は、「正当防衛」と「緊急避難」以外の武器使用は認められていないが、一般人や他国の軍隊を警護できるよう武器の使用基準を大幅に見直そうというのである。「敵に襲われた一般人を自衛隊が助ける」といえば聞こえがいいが、これは明らかにPKO5原則の(3)でいう「中立的立場」を逸脱し、政府要人警護などのために反政府勢力との戦闘を推進することを意味する。さらに「他国の軍隊を防衛する」の規定は、日本国憲法第9条が厳しく禁じている「集団的自衛権」行使であり、憲法違反である。このような運用は、陸上自衛隊のイラク派兵でも決して認められなかった。海外での治安維持や他国軍との共同作戦は「専守防衛」を逸脱している。PKO5原則を緩和した形で南スーダンへの自衛隊派遣を許せば、自衛隊の海外派遣の新たな段階をもたらすことになるだろう。
PKO部隊の武器使用基準見直し、民主が検討へ(読売新聞)
民主 PKO“参加五原則”議論へ(NHK)

 野田政権は日米同盟重視を露骨に謳い、膠着している普天間返還問題について辺野古アセスメントの強行姿勢を打ち出している。管政権のもとで消極的と見られていた南スーダンへの派兵についても、対米軍事協力という面から一気に決着をつけようとしている。
 オバマ米大統領は10月14日、ウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍」(LRA)の司令官の拘束と組織の掃討作戦を支援するため、特殊部隊を中心とする米軍部隊約100人の派遣を命じ、米議会に通知した。すでにウガンダ、南スーダン、中央アフリカ、コンゴで、主に各国の首都に駐留させている。自衛隊の13年ぶりのPKO派遣決定は、このような米のアフリカ介入と無縁ではない。
ウガンダなどに米軍100人派遣=武装勢力掃討を支援−オバマ大統領(時事通信)

 南スーダンPKO派遣決定は、石油利権に深く絡んでいる。政府は、外務、防衛両省や陸海空自衛隊員からなる調査団とは別に、外務副外相を団長とした企業関係者約60人も参加する官民合同代表団を南スーダンへ派遣している。スーダン、南スーダン、ケニアを歴訪し、大商談会を開催しているのである。南スーダンでは、政府・民間・国営企業関係者、商業産業投資省,道路橋梁省,農林省,外務・国際協力省,石油鉱業省及び商工会議所等が次々と報告を行っている。石油利権にとどまらず、紛争にあえぐ国につけ込んでどうやって一儲けするかという関心である。
アフリカ貿易・投資促進官民合同ミッション[概要](外務省)
官民合同代表団:南スーダンへ派遣 企業関係者60人も(毎日新聞)

 政府は、新たに生まれた石油産出国に対して千載一遇のビジネスチャンスを逃さないために、政治的アピールのために、自衛隊の一つも出しておいた方がいいと考えているのである。戦争をビジネスに結びつけたいという日本のグローバル企業の利権のために、日本国憲法を蹂躙することは許されない。
 私たちは一切の海外派兵に反対する。南スーダンへの自衛隊PKO派遣をやめよ。PKO5原則の見直しをやめよ。

2011年11月2日
リブ・イン・ピース☆9+25