トランプはイランに戦争を仕掛けるな!
中東の戦争に自衛隊を派兵するな。戦争法は廃止

 イラン沖で戦争の暗雲が巻き起こっています。6月13日早朝(現地時間)、ホルムズ海峡のすぐ外のオマーン湾で2隻のタンカーが何者かの攻撃を受けました。現地時間7時前に日本の企業が運航する化学タンカー「コクカ・カレイジャス」が機関室付近に攻撃を受け、エンジンルームの燃料庫に直撃し火災になった。消し止めたがエンジンは停止し漂流し始めた。3時間後に再び機関室の前に攻撃を受けました。乗組員は全員退船し、近くのオランダ船に救助されました。後に、アメリカ海軍の軍艦に移りました。7時頃にはもう一隻のタンカー、台湾企業が運航する「フロント・アルタイル」も攻撃を受け炎上しました。写真を見る限り後部の機関室付近と、原油タンクを攻撃され火災が消えません。同船は漂流し、乗組員は退船しました。
 攻撃の報告は、安倍首相がイランの最高指導者ハメネイ師と会談している最中に届きました。ハメネイ師はイランが戦争を望まないこと、核兵器の開発も使用もするつもりがないこと、しかし核合意を一方的に離脱し、経済制裁をする米と話し合いを呼びかけるつもりはないと安倍首相に表明しました。戦争になることを望まない意思は明確で、タンカーへの攻撃に対してはもちろん関係を否定しました。
 一方、米ではポンペオ国務長官が攻撃はイランの責任と表明しました。さらにその後、米軍がコクカ・カレイジャスの船体側面から「イラン革命防衛隊が不発の接着爆弾を外している」とされるビデオを公表しました。ナレーションでは現地時間午後4時10分。犯人はイランだというわけです。
 しかし、このビデオは極めて疑わしいものです。誰が何をしているのか本当のところは画像からは全く分かりません。米軍が決めつけて「そうだ」と言っているだけです。この船を運航している日本の国華産業は2回目の攻撃では「乗組員が飛来する物体を見たと証言している」と言っています。しかし、このビデオとその前に米軍が撮影した思われる写真には2回目の攻撃の痕は見当たりません。するとこれはまだ乗組員が残っている2回目の攻撃前なのか。その時間になぜ真横から米軍は写真を撮れたのか?。あるいは米軍の発表時間通りだとしても、攻撃の痕を調べていただけではないのか?。少なくともビデオからは米が言うようなイランの責任だ等と断定することはとうていできないのです。
 しかし、この事件の意味することは明確です。誰かが米をイランと戦争させようとけしかけているのです。(軍事的劣位にあるイランから仕掛ける理由はありません)。米にイランと戦争させる事に利益を感じ、それに引きずり込もう国(勢力)があるのです。5月の初めからの一連の事件は、底流に流れるその動きの存在をはっきり示しています。だから、日本と世界の反戦平和運動の任務は、米国に対イラン戦争をはじめさせないこと、中東で戦争を起こさせないこと、世界を戦争の渦にひきずりこませないことなのです。

米・イスラエル・サウジが連携した謀略 「第二のトンキン湾事件」の危険
 5月の初めからアメリカがイランに対する武力による脅しを始めました。5月2日にイラン産原油の全面禁輸を始めた後のことです。5月5日にボルトン大統領補佐官は原子力空母リンカーンと護衛艦隊、B52爆撃機をペルシャ湾と中東に追加派兵したと公表しました。続いてパトリオット対空ミサイル部隊が送られ、20日には強襲揚陸艦とその艦隊が、24日には1500人の米兵が増派されました。ボルトン大統領補佐官は「米と同盟国の利害に対するいかなる攻撃も容赦のない武力攻撃を招く」とイランを個喝し、トランプ大統領も「もしイランが戦いたいなら、それでイランは正式に終わりだ。二度と合衆国を脅すな!」とツィー卜しました。しかし、一方的に軍事挑発を仕掛けているのはどう考えても米国です。
 米の戦争挑発にはイスラエルとサウジアラビアが直接加担しています。ほとんど謀略なのです。メディアでさえも「第二のトンキン湾事件」と呼び、今回の事件のあとも「本当にイランがやったのか?」と米の発表を疑っているのはそのためなのです。4月に「イラクでシーア派が米軍に対する攻撃を準備している」と情報を流したのはイスラエル情報部です。さらにイラクにミサイルを積んだボートが向かっている警告し、この情報を受けた米軍が空母、強襲艦隊、爆撃機を送ったのです。米はイラク大使館などから非常時要員を除いて要員や家族を国外に退避させました。5月12日にはホルムズ海峡近くのオマーン湾のフジャイラ沖で「4隻のタンカーが何者かの攻撃を受けた」と報じられました。しかしノルウェー籍のタンカーの写真は公表されましたが、同じく攻撃されたというサウジ船籍のタンカーの被害の証拠は公表されませんでした。厳重な警戒態勢の中でタンカーが4隻も連続して攻撃されたのに、犯人どころか、誰が、どんな手段で攻撃されたかも明らかでなかったのです。続いてサウジでパイプラインが攻撃されたと報道されましたが、これはイスラエルが10日に予告したものが、14日に攻撃されたのです。5月20日にはバクダットの米大使館から1・6キロも離れたところにロケット弾が着弾しました。これらはどう考えても米軍やCIAの自作自演か、イスラエルやサウジアラビアの破壊工作の可能性が極めて高いのです。

米は一方的な核・ミサイル開発放棄要求をやめ、核合意に戻れ
 トランプはイランに対して経済制裁を行い、原油の輸出を禁止し、鉄鋼など金属資源の輸出も禁止しました。事実上の経済封鎖です。しかし、米がイランに対して制裁を行う何の根拠も正当性もありません。国連の決議もなければ、欧州諸国も反対です。イランが宣戦布告をしてもおかしくないような不当極まりない行為なのです。トランプは「イランと戦争は望まない」と言いながら「交渉」とは名ばかり、核開発・ミサイル開発を全面放棄せよと、全面降伏しろと厚顔にも要求しているのです。
 トランプは2017年にイランと米英仏口中の国連常任理事国プラス独との間で結ばれた核合意を一方的に破棄し離脱しました。しかし、他の諸国はイラン核合意の維持を望んでいます。6月1日には国際原子力機関がイランは核合意を遵守していると報告しています。ところが、5月2日からイラクの原油輸出を全面的に禁止し、イランと石油取引を行えば、その国・企業も制裁対象とすると脅迫して、日欧諸国の対イラン貿易を事実上禁止させたのです。
 イランの国民はこれまでの制裁によって打撃を受け、必要物資を輸入できなくなり、生活の悪化を押しっけられています。今回の石油全面禁輸でそれが厳しくなるのは明白です。しかし、米にはイランの国民を困窮させ、飢えさせる権利などありません。食料や薬不足で幼児や老人を死なせる権利などないのです。
 にもかかわらず、イランは自制的な対応を維持しています。戦争は望まない姿勢は一貫しています。軍事的挑発に乗らず、核合意についても、まず当事国のフランス、ドイツ、ロシア、中国、イギリスの各国に対し、核合意に盛り込まれた原油取引と金融決済の約束を果たすか、米による経済制裁に従うか、60日以内に選ぶよう求めました。当事国が約束を守らない場合、イランはウラン濃縮の開始など履行の一時停止をするの表明です。
 イランはイラクの3倍の人口8千万人の地域の大国です。もし米軍がイランに戦争を仕掛けても、通常戦争・地上戦で米軍が勝利する見通しは立ちません。しかしとんでもない大量殺教と混乱と破壊が起こるでしょう。戦争になればホルムズ海峡の封鎖だけでなく、イスラエルやサウジアラビアなど中東全域を戦争に巻き込み、世界全体にそして石油と世界経済全体に破壊的な影響をもたらすだろう。何としても中東で戦争させてはならないのです。
 米は軍事的威圧と経済制裁で政権転覆や屈服をせまる行動を世界中で行っています。ベネズエラのマドゥーロ政権に対して、キューバに対して、そして朝鮮民主主義人民共和国に対して、さらには中国やロシアに対しても行っています。その強圧的な姿勢で国内の保守強硬派の支持を固めようと思っているのでしょう。それは世界中で戦争の火種をばらまく行為です。トランプ政権こそ、世界中の平和を破壊する危険で侵略的な政権なのです。

自衛隊の自動参戦装置=戦争法の廃止を訴えていこう
 日本もその危険から逃れることはできません。安倍首相は先の日米首脳会談で、トランプに「仲介役」を買うことを約束しました。イラン訪問の結果は明白です。戦争国家アメリカに忠実について行くだけの対米従属国日本に仲介外交などできないのです。結局は、米の軍事的憫喝の代弁者となって核開発全面破棄・ミサイル廃棄を呑めとイランに伝えるだけでした。こんな一方的な要求をイランが呑むはずがありません。追い返されなかっただけイランが紳士的だったのでしょう。緊張緩和を言うならトランプに対して空母・爆撃機の撤退こそ要求すべきです。
 米・イラン情勢の逼迫化は他人事ではありません。もう一度戦争法を想起しよう。戦争法は自衛隊の自動参戦装置なのです。全く報道されていませんが、米が対イラン戦争に踏み出せば、今や安倍政権は直ちに戦争に参戦する体制にあるのです。忘れもしない。安倍首相が戦争法発動および集団的自衛権の実例に挙げたのはホルムズ海峡の機雷封鎖解除への自衛隊参加でした。そしてすでに日本の右翼、つまり安倍首相のお友達達は自衛隊を中東に送るべきだとの声を上げ始めています。安倍首相は日本の安全保障が危機にさらされていると称して、米のイラン・中東侵略に参戦に違いありません。自衛隊に、米軍が主導する帝国主義軍隊の一部隊として、中東への侵略行為の片棒を担がせてはなりません。
 トランプの対イラン戦争挑発に反対の声を上げよう。安倍政権の戦争参加に反対し、戦争法を発動させるなの声を上げよう。市民に広く戦争の危険を訴え、戦争法廃止を要求しよう。ANSWER連合やストップ戦争連合や世界平和評議会など、全世界のイラン戦争反対の反戦平和運動と連帯して闘おう。

2019年6月14日
リブ・イン・ピース☆9+25