ボリビアの反動クーデター糾弾
モラレス大統領とボリビア人民に連帯の声を

 11月10日、南米のボリビアで右翼・野党・警察・軍がクーデターを起こし、選挙で選ばれたばかりのエボ・モラレス大統領を辞任に追い込みました。モラレス大統領はメキシコに亡命せざるをえませんでした。私たちは、非合法な手段で政権を転覆させたクーデターを糾弾します。
 モラレス大統領は14年前に政権について以来、先住民や労働者の側に立って差別に反対し、内外の資本による強欲な搾取を制限し、天然ガスなどからの富を人々が貧困と差別から抜け出すために使う政策をとってきました。モラレス大統領を支持してきた先住民(人口の半数以上を占めます)や労働者はモラレス復帰と暫定大統領を僭称するアニェス辞任を求めて、暫定政府、治安部隊の弾圧、極右の暴力部隊と闘いながらボリビア全土で大衆的な抗議闘争を続けています。事実上の首都ラパスは先住民の包囲のもとにあります。私たちはメディアの一方的なプロパガンダに惑わされることなく、ボリビアで起こっていることを明らかにし、自分たちの代表を取り戻そうとするボリビアの人民大衆と連帯していきたいと思います。

「選挙結果の不正」は全くのデマ
 世界中のメディアがボリビアで「選挙不正疑惑」が原因でモラレス大統領が辞任したと報じました。しかし、選挙には不正などなかったと複数の機関が明らかにしています。ベネズエラのメディア・テレスールは11月13日に「選挙不正疑惑」がデマであると報道しました。もっと詳しい報告書をアメリカ経済政策センター(CEPR)が出しました。この報告書は、(1)選挙結果の報道は元々、速報(TREP)と本集計の2系統で行われた。「集計が止まった」といわれるのは速報システムで、最初から開票が80%を越えれば停止する事になっていた。以後はより正確で確定的な本集計に一本化された。この速報の停止をメディアは勝手に「24時間の空白」と呼んで疑惑を丁稚あげた。(2)速報が停止してから、二人の票差が更に開いたが、それは当然のことだった。集計が早いのは都市部で、遅れるのは農村部だ。そして人口の過半数が先住民であるボリビアでは、先住民出身のモラレス大統領の支持は農村部で大幅に高くなる。農村部の票があいて差が拡大するのは当たり前のことだ。(3)この傾向はすでに83%段階でも現れていた。その段階でも1回目の投票でモラレスが10%以上の差をつけて勝利することが予測されていた。(4)米州機構OASはこれらのことが分かった上で意図的に「不正疑惑」を持ち出した。CEPRの共同ディレクターであるマーク・ワイズブロットは「OASの21日のプレス声明は選挙結果に何の証拠もなく疑問を突き付けるもので非常に疑わしい。2日後の予備報告も何の証拠も提供しなかった」と露骨にOASの政治的な介入を批判しています。何の証拠も出さずに「不正が行われている」と疑惑をでっち上げたのです。

実際には計画された政権転覆のクーデター
 米国と米州機構OAS、ボリビアの極右と野党は今回の選挙にあたって最初から政権転覆のクーデターを計画していました。2年前に野党は「4選は憲法違反」と大騒ぎをしてモラレス批判の大合唱を組織しました。今回の選挙では、開票80%段階で(報道とは逆に)野党はモラレスの勝利と判断したのです。農村部の票はモラレス票が多く決選投票の望みが断たれたのです。その段階でモラレスの勝利を絶対に認めないと決めていたカルロス・メサらはクーデターに突き進みました。OAS選挙監視団声明を持ち上げ、選挙の不正があったと大騒ぎし、各地で大統領や与党MAS(社会主義運動)に対する暴力行為、暴動、襲撃や放火を開始したのです。選挙後から2週間にわたって極右による道路封鎖や襲撃で経済や交通は寸断させられ、正常な市民生活が麻痺させられました。大統領の家族をはじめ多くの人々が生命を脅かされました。警察と軍の高官はこれらの暴動を抑制するのではなく、違法なクーデターの側にすり寄りました。11月8日の段階で多くの地域で警察が大統領権力を裏切り寝返ったのです。野党側の暴力行為や襲撃、デモに対して治安を維持すべき警察が出動を拒否し、彼らにやりたい放題をさせました。9日には大統領を護るべき軍上層部が裏切りました。軍は10日にモラレスに対し辞任を突きつけました。これと呼応する形で野党と右翼勢力は大統領の自宅や家族、政権幹部の自宅、与党MASの事務所などを襲撃し、人々の生命を脅かす行動に大規模に踏み出しました。大規模衝突と大虐殺の危険を作り出したのです。モラレス大統領は、自分でも言っているように、「カルロス・メサとルイス・カマチョ(極右過激派)が数千人の兄弟を虐待し傷つけるのを止めるように、私は大統領職を辞任することを決めた。私には平和を守る義務がある」と考えたのです。西側メディアが宣伝するように「選挙不正で追い詰められ、辞任するしかなかった」のではなく、正当な選挙結果を覆そうとする極右と野党の暴力行動、これに組して大統領を裏切った警察と軍の上層部によるクーデターの直面し、さらに極右と軍・警察による人民虐殺を避けるために職を辞したのです。
 一連の過程は誰が見ても、野党と米国、OASが結託し、警察と軍隊指導部を寝返らせての政権転覆クーデターです。そこには一片の正義も公正もありません。OASがこの計画に初めから深く関与していることは、ありもしない「選挙不正疑惑」で旗振りに大きな役割を果たしただけでなく、モラレス大統領が辞任後飛行機で出国しようとしたのをOAS諸国(ペルー、チリ、ブラジルなど)が上空通過を拒否し、出国を阻止した事でも分かります。準備が良すぎるのです。クーデターを想定し、出国阻止の体制をあらかじめ取っていたのです。私たちはボリビア内外からの非合法なクーデターによるモラレス政権転覆を認めません。

メディアによるプロパガンダ
 ボリビアで起こったクーデターについて、日本を含めて世界の大手メディアはクーデタ支持・賛美のプロパガンダを垂れ流しています。このプロパガンダは事実に全く基づかない、完全なデマなのです。
 これらのメディアで一般にばらまかれている報道は、以下のようなものです。ボリビアでは10月20日に大統領選挙があった。投票結果は開票83.85%段階でエボ・モラレス候補が45.71%、カルロス・メサ候補が37.84%とその差は10%以内(7.84%)であり、憲法に従えば上位2名の決選投票実施の可能性が大きかった。ところが、突然選挙集計が24時間停止し、再開された集計はそれまでの傾向と異なり、両者の差は不自然に拡大した。最終結果はモラレス47.08%、メサ36.51%でその差は10%を越え、モラレス候補の勝利となった。しかし不正があったに違いない。選挙監視団を送ったOAS(米州機構)は21日に選挙で不正があったと声明を出した。その直後から,選挙の不正に抗議する大衆行動が各地で起こった。11月10日にはモラレスは選挙のやり直しを言わざるを得なくなり、11日には辞任し、亡命を図った。というものです。しかし、前に述べたように「不正をしたモラレスが抗議の前に自壊した」というのは完全な作り話です。
 日本の大手メディアも欧米メディアのプロパガンダと変わらない宣伝をしています。日経の外山尚之特派員は「モラレスは『独裁者』と呼ばれ、追われるように国を出た」「モラレスは不正に手を染めなければ当選できないほど追いつめられていた」「モラレスの去ったことで独裁化の危機は去った」(11月15日)と書き、朝日新聞の岡田玄特派員も「不正選挙疑惑から辞任表明に追い込まれた」と書きました。明らかに右翼と軍・警察によるクーデター礼賛です。

ボリビア人民の闘いは続いている
 モラレス大統領の辞任と亡命で問題が終わったわけではありません。それどころか、不法な手段でクーデターを実行した暫定政権から、選挙で選ばれた正当な大統領に権力を奪い返す闘いはこれから拡大しつつあります。ボリビアは先住民が人口の過半数を占め、混血も合わせると80%を超えます。国会も上院、下院ともモラレス与党のMAS(社会主義運動)が過半数の議席を占めています。モラレス大統領と同時に、副大統領、上院議長、下院議長が同時に辞任して、憲法上大統領の職責を引き次ぐものはいなくなりました。野党側は、下院副議長のアニェスに暫定大統領を宣言させ、再度の大統領選挙実施で、クーデターによって得た権力にお墨付きを与えようとしています。しかし、アニェス就任は議会の過半数を占めるMASの議員が出席せず、定足数にさえ達しない状況で行われました。「議会の承認」とは程遠い状況です。ベネズエラのグアイドと同様、何の根拠もない「暫定大統領」僭称に過ぎません。アニェスは暫定政権を名乗り、モラレス大統領を「煽動とテロリズム」容疑で告訴しました。また軍や警察がデモ制圧などで殺人などを起こしても刑事罰を科さないという驚くべき法律を作りました。「再度の大統領選挙にはモラレスは認めない」とし、またベネズエラとの外交関係を断絶するなど、露骨な反人民的で米国寄りの性格をむき出しにしています。
 大統領とMASを支持する先住民や労働者は各地で野党・警察・軍によるクーデターを非難し、アニェスの辞任とモラレス復帰を要求する大規模な行動を始めています。ラパスを人民大衆の大動員で包囲する行動が始まっています。人々は治安当局の弾圧で殺された犠牲者の棺を先頭にデモを行っています。これまでにすでに30人近い人々が殺されています。私たちは、ボリビアの先住民、労働者が自分たちの大統領、自分たちの権力を取り戻そうとする行動を支持し、これに連帯します。

2019年11月23日
リブ・イン・ピース☆9+25