SMBC信託銀行はベネズエラ大使らに対する口座凍結を直ちに解除せよ

 朝日新聞デジタル(10月6日付け)によれば、駐日ベネズエラ大使や妻、大使館員の邦銀の口座が9月から凍結されていることが分かった。イシカワ大使は「第3国である日本の銀行が、米国の制裁を理由に、外交官の保護義務を定めたウィーン条約に違反するのは理解できない」と話している。
[朝日新聞デジタル]駐日ベネズエラ大使らの口座、SMBC信託銀が「凍結」

 上記の記事によれば、大使や日本人の妻、大使館員ら5人のSMBC信託銀行の口座が凍結され、ネットバンキングやATMの利用ができなくなった。SMBCの広尾支店副支店長は、トランプ米大統領が8月5日に出したベネズエラ政府関係者の取引を禁止する大統領令を受け、「取引の一部がこの規制に抵触する懸念が生じる」と判断したという。しかし、大使だけでなく日本人である妻や子どもの学費やクレジットの引き落としもできなくなり、大使館員も家賃の引き落としもできなくなった。イシカワ大使は外交官の便益や特権を定めるウィーン条約に「違反している」だけでなく、「ベネズエラ人の外交官だけでなく、日本人である妻子に対しても人権侵害だ」と批判している。

 口座を凍結したのはSMBC信託銀行だ。大使が外務省に働きかけた結果10月3日から円の口座は使えるようにあったが、ドルの口座は凍結されたままだ。報道ではSMBC信託銀行は「米財務省の規制に違反しないか調べるための措置、窓口で取引内容を証明できる書類を提出し、内容確認の上取引しているので、完全な凍結ではない」(朝日)と開き直っている。しかし、事実上の凍結であることには間違いない。

 SMBC信託銀行は日本の銀行だ。ドル口座もその中にある。それを凍結する根拠はどこにあるのか。トランプは8月5日の大統領令で米財務省が米銀行にあるベネズエラ政府の口座を凍結し、米銀行がベネズエラ政府や指定する個人の取引をすることを禁止した。米財務省は米国が指定した国・地域や特定の個人・団体などについて、取引禁止や資産凍結などの措置を講じている(米国財務省外国資産管理室OFAC規制)。OFAC規制は、米国人・米国金融機関を含む米国法人のほか、米国内に所在する外国人・外国法人に適用され、主に、米国で決済される米ドル建取引が、規制の適用を受ける。これが現在の米の最大の経済制裁・封鎖手段になっている。だから米財務省は邦銀の米国支店内にある口座を凍結することができるのだ。他国の資産を勝手に凍結するという横暴極まりないことを、国連決議もなしに勝手にトランプ政権だけの意志で行えるのだ。それ自体がとんでもない専制君主的なやり方であり、日本にとっては主権を無視した不当な行為に他ならない。

 新聞報道を見る限りSMBC信託銀行は「完全な凍結ではない」と言っており、大使個人や個々の大使館員の口座に直接OFAC規制がかかっているようには見えない。もしそうであればSMBC信託銀行が米国政府の動きを忖度して、独自の判断で勝手に口座を凍結していることになる。個人の資産を法的根拠もなしに勝手に凍結し、引き出しに応じないのは違法行為そのものだ。イシカワ大使の言うように、外交官と外交活動の保護を定めたウィーン条約違反を自分の判断で行って米政府に加担しているのだ。主権を売り渡し米政権に奉仕しているとすれば、どこまで米国にたいする従僕意識、植民地根性がしみ込んでいるのだろうか。呆れるほかない。
 SMBC信託銀行には、直ちに不当な扱いをやめる、関係する全ての口座の凍結を解除するよう求める。

 朝日新聞によれば外務省も「個別の金融機関の対応については説明できない」としながら「ウィーン条約を踏まえ、ベネズエラ大使館および同大使館関係者を適切に接受している」と見解を出している。しかし、大使館に正常な大使館活動を保障する義務が外務省にありながら、銀行による不当な扱いを放置しており、それを「適切に接受している」などと開き直っているとすれば、意図的に加担しているとしか考えられない。直ちに是正のために働き掛けるよう要求する。

2019年10月11日
リブ・イン・ピース☆9+25


2019年10月11日

SMBC信託銀行 様

ベネズエラ大使、大使館員等の口座凍結への抗議

 朝日新聞デジタル(10月6日)の報道によれば、貴行はイシカワ駐日ベネズエラ大使をはじめ大使夫人、大使館員らの個人のドル口座を事実上凍結しています。この凍結がもしも米国財務省外国資産管理室OFAC規制によるものであるならば、国連決議などの根拠を全く欠き、米国の都合だけで個人の資産を勝手に処分することに対して貴行が米国政府に抗議するべきであり、もしそうでなければ、貴行が米国政府の意向を忖度し、独自の判断で何の根拠もない違法行為をしていると言わざるを得ません。
 いずれにしても、外交官の正当な保護を定めたウィーン条約を踏みにじる行為、さらには顧客の人権を侵害する行為です。銀行業務の精神を根底から否定する行為です。私たちは、貴行が直ちに凍結した上記の口座を凍結解除し、大使らに謝罪し、事態を正常化するように求めます。

リブインピース☆9+25