差し迫る紛争と軍事介入の危険
軍事介入の口実作りのための「人道支援作戦」をやめろ

 グアイドの「暫定大統領」僭称から1カ月がたった。グアイドはコロンビア国境を越えて米の「人道支援物資」を運び込むと公言している。コロンビアにはCIAの別働隊として悪名が高い米国国際開発庁USAIDが米軍のC17大型輸送機で乗り込み、国境で待機している。グアイドは国境を越えてこの物資を「受け取る」ために大規模なボランティアの組織化を呼びかけ、国境に押しかけようとしている。
※ベネズエラでのUSAIDの活動についてはhttp://latinpeople.jugem.jp/?eid=49

 2月23日を頂点に、ベネズエラで米の指揮するクーデターあるいは武力衝突を作り出しそれを口実とした軍事介入の危険が高まっている。われわれは米国が自らシナリオを書いてベネズエラで反革命的クーデターを起こしたり、軍事介入する事に断固反対する。外からの、米国による「大統領」押しつけは絶対に認めない。ベネズエラの大統領はベネズエラ人民自身が選ぶもので、マドゥーロ大統領こそが正当な大統領である。
 日本政府は2月19日に、近々軍事介入とクーデターの目論見があることをあらかじ知っているかのように、グアイド支持を打ち出した。非合法なクーデターを煽り、政権転覆に手を貸そうとすることを糾弾する。直ちにグアイド支持を撤回することを要求する。

グアイドの行動は全て米国の計画によるものだ
 マドゥーロ大統領は、昨年5月に行われた大統領選挙に基づいて、1月10日に大統領2期目に就任した。ベネズエラ国内では野党の多くも大統領選挙に参加し、その結果を受け入れてきた。米の直接指示に従う極端な反対派だけが結果を認めず、国民からの孤立を深めていった。アメリカは、自分の手先がどんどん力を失っていくのを見て焦り、まず第1に経済制裁を強化し、国内の物不足を作り出し、マドゥーロ政権への不満を高めようとした。第2にクーデターを引き起こすべく計画を立てた。それが「ボルトンプラン」だ。大統領暗殺(実際に暗殺未遂事件が起こった)、現政権の打倒と暫定政府評議会設立だ。今起こっていることはまさにこのシナリオ通りだ。
 グアイドは1月11日に「(支持されるなら)暫定大統領になってもいい」と表明した。そして1月23日の野党の大衆集会で突然自称「暫定大統領」を宣言した。こんな「暫定大統領就任」などあり得ない。しかし米政府、それと協調してきたリマグループのいくつかの政府などが即日これを承認し、支持した。グアイドの「暫定大統領」僭称そのものが米の指示と支援によるものであることは明らかだ。シナリオを書いているのはグアイドではない。グアイドは米の書いたシナリオ通りに振る舞う三文役者に過ぎないのだ。
 2月23日はグアイドが僭称してから1カ月後だ。この日をめどに米はクーデターのシナリオをさらに一歩進めようとしている。その舞台はベネズエラとコロンビアとの国境である。いま国境における衝突が作り出されようとしているのだ。コロンビアには米国国際開発庁USAIDが米軍のC17大型輸送機で乗り込み、「人道支援物資」を国境付近に運び込んでいる。それが「食物や薬」など人道支援物資であるのか、武器弾薬を含むものであるのか、誰も知らない。いずれにしても、人道支援といいながら、ベネズエラ政府に渡すのではなく、グアイドに渡すために運んでいる。マドゥーロ政権打倒のための介入であることは明らかだ。そのことに全く眼をとざしてあたかも「人道支援」であるかのように描き、「マドゥーロ政権は物資の搬入を認めるべきだ」と宣伝するマスコミはCIAの手先に成り下がったとしかいいようがない。
 一方、グアイドは、国境に「支援物資」を取りに行こうと「ボランティア」を組織している。60万人を集めたという。数字の真偽は分からないが、いずれにしても国境に大量のグアイド派を動員して、そこで警備当局と衝突を作り出そうとしていることは確かだ。国境警備とグアイド派(それにUSAID)の大規模衝突が目的なのか、コロンビアに基地を置く傭兵やコロンビア軍、あるいは米の提供する武器で武装したグアイド派による反革命の武装クーデターの開始になるのか。これらを口実に米軍が軍事介入を開始できる状況を作ろうとしているのではないか(トランプは軍事オプションを常に強調している)。
 いずれにしても、米はグアイドの僭称にもかかわらずベネズエラの国内に二重権力を作ることに失敗し、軍に対する執拗などう喝(トランプ曰く「従わなければ全てを失うぞ」)にも関わらず軍の動揺は全く起こっていない。それを外から軍事力によって介入し、ベネズエラの人民権力を打倒しようとする企みを絶対に許してはならない。

不穏な動きが連続して起きている
 1月23日に向けて武力衝突が準備されていることを示す証拠が連続して報じられている。
(1)ベネズエラ国内のバレンシア空港に着陸した米国の貨物機が、19丁の小銃と119の弾薬カートリッジ、数十の照準スコープを密輸したことが発覚した。2月6日に通常の税関や検査官による検査に引っかかり明らかになった。この武器を運んだのは、アメリカのノースカロライナに本拠を持つ21エア会社のボーイング767型機だ。この飛行機は1月11日以来マイアミとベネズエラのカラカス、バレンシア、コロンビアのボゴダ、メデジンとの間を40回も飛行している。それまでフィラデルフィアとマイアミ、あるいは全米各地を飛行していたこの会社の飛行機は、1月11日になって突然ベネズエラ、コロンビアに飛行し始めた。そしてMcClatcyが武器密輸を報じた直後に飛行をやめた。まさにグアイドの計画に連動してベネズエラ反革命派に武器を運んでいた可能性がある。マイアミは米特殊軍や海兵隊の本拠地で、これまでも反革命的な介入の拠点ででもあったところだ。しかも、21エアのオーナーはCIAのフロント会社ともつながっている。ベネズエラで武器の空中投下などを行っていた可能性さえ否定できない。
https://www.mcclatchydc.com/news/nation-world/national/national-security/article226011940.html

(2)さらに、ベネズエラに近いコロンビア沖を米軍の電子偵察機RC135V/Wが繰り返し飛行していることを、軍用機の運行をウォッチしているグループが明らかにした。電子偵察機は、ベネズエラ国内の電波情報の盗聴、使用電波の把握などを行っていたと思われる。ベネズエラ軍内部の通信傍受により情報をしいれ、一旦紛争が起こったときには、電子妨害で無線を使えなくし、指揮命令系統を麻痺・混乱させるための準備をしていたと考えられる。
https://twitter.com/search?f=tweets&q=maduro%20spyplane&src=typd

(3)キューバ共産党の機関誌グランマは、2月14日に「ベネズエラに対する米国の軍事冒険を止めなければならない」という政府の声明を発表し、ベネズエラに対する米の介入やクーデターに反対を呼びかけた。その中で、2月6日から10日までの間に何機もの米軍輸送機が米特殊軍と海兵隊の基地からプエルトリコのラファエル・ミランダ空港、ドミニカのサン・イシドロ基地などカリブ諸島の重要地点に飛行したこと、これらの飛行はそれぞれの国の政府に秘密で行われ、人員や物資が動かされていることを、指摘した。ベネズエラに介入する特殊部隊、海兵隊の準備活動、潜入の準備ではないか。

 事態は切迫している。国境での「人道支援」の強行が米の軍事介入の絶好の口実を作り出し、トランプがマドゥーロ政権打倒の野望に向かって進むことに断固反対しなければならない。ベネズエラの政府はベネズエラの人民が決める。軍事クーデターや軍事介入を押しつけるな。対話と政治解決を保障しろ。

2019年2月21日
リブ・イン・ピース☆9+25 W