脳死臓器移植法改悪を許さないための緊急のお願い


 脳死臓器移植法の改悪案が、連休明けにでも強行採決される危険が迫っています。これについて、「脳死と臓器移植を考える会」より、厚生労働委員へのFAX行動呼びかけの投稿がありました。事態が緊迫していますので、リブ・イン・ピース☆9+25からも是非ともみなさんのご協力をお願いします。
 みなさんは、「脳死」と診断され、臓器摘出される寸前に、自発的な動きを発見されて、その後生還し社会復帰したアメリカの21歳のザック青年のことをご存知でしょうか。彼はバイク事故で重度の脳損傷をうけ、「脳死」と診断されました。しかし彼はその時、意識があり、自分への死の宣告を聞いていたと、後に語っています。医師が正確に「脳死」判断をした症例でも、「意識があり生きている」のです。他にも、「脳死」と判定された患者が生還し社会復帰した例や、出産した事例などが多数報告されています。
 現在提出されている3つの「臓器移植法改正案」のうち、A案は、一律に「脳死」を人の死とし、0歳児からの臓器提供を家族の同意のみで可能とする案です。連休明けには、新たに4つ目の案が提出される予定です。この案は、死の定義は現行法と同じですが、0歳児から家族の同意のみで臓器移植を可能とする内容です。しかし、子どもの脳は回復が速く、日本小児科学会倫理委員会は「小児の脳死判定で『100%脳機能が戻らない』とは断言できない」としています。
 臓器移植のためにまだ生きている人の生命を奪うことは、許されるはずはありません。臓器摘出される側の生きる権利・基本的人権をないがしろにするような「臓器移植法改悪」に反対の意志を表明しましょう。みなさん、是非FAX行動にご協力をお願いします。
(この文章は、5月2日にリブ・イン・ピース☆9+25のメーリングリストに送ったものの転載です。)

2009年5月2日
リブ・イン・ピース☆9+25


[投稿]衆院厚生労働委員に今すぐFAXを!
脳死は人の死ではない
臓器移植法の改悪に反対しよう

2009.5.1 脳死と臓器移植を考える会
吹田市山田丘2−15 大阪大学附属病院看護師労働組合気付

脳死判定されても生きていた。自分自身の死亡宣告をきいていたザック青年
 2008年3月23日アメリカで、「バイク事故で死んだ若者ザック君が生還」が報道されました。これは、2007年11月の実際にあった事例です。バイク事故で、重症の脳損傷を受け、脳血流もない状態で、脳死判定が行われ、死亡宣告が行われました。本人はドナーカードを持参しており、家族も同意、臓器摘出の時刻もきまり、ヘリコプターが病院に到着しようとしていた、その時、死亡宣告から4時間後でした。最後の別れを惜しむ親戚の看護師が動きを発見し、あやうく、臓器摘出は中止となりました。そして、救命のための治療の結果、48日後にリハビリ病院を退院し、見事社会復帰を果たしたのです。本人は、死亡宣告されたときにそれが聞こえ「心は狂わんばかりになりました。」と語っています。
 医師は、検査結果は正確なものであったと主張、生命兆候も見逃しはしなかったと言っています。21歳の若さと健康が有利に作用したのだろうと言っています。
このことが意味することは、脳死と正確に判定されても「生きている」、脳死者に、「意識はあった」ということ、重度な脳損傷を受けても若い人は、生命力が強く、生存の可能性が極めて高いという事実です。私たちは、この事実を、真摯に受け止める必要があります。
臓器移植を行うがために、人の命が奪われるようなことがあってはなりません。

脳死判定後も意識がある
 現在国会で、臓器移植推進のために法案が改悪されようとしています。移植の成功率をあげるためには、できるだけ、新鮮で、薬剤も最小限で、若い人の臓器が狙われます。交通事故の患者は、救急医療の現場に運ばれてきたときから、臓器提供候補者として扱われていきます。
 救命救急の現場で、救命治療に全力を投入し、一方で、もうだめだとあきらめ、臓器保存のための処置に切り替えていくことは、矛盾した行為です。救うべき瀕死の人を救う治療に専念できなくなるのです。ザック君のように、脳死状態に陥った患者の多くは、殺されていってしまうのです。
 08年にも、「脳死者には意識が残っている場合がある」という古川論文も発表されています。脳死判定基準では脳機能不全を判明できないことを指摘しています。移植を進めるために、人の死を早める危険がはらんでいるのです。
※脳死と判定された患者が生還した事例は多数報告されています。
 ザック青年の記事(22歳)
 http://www.msnbc.msn.com/id/23768436/
 http://www.tulsaworld.com/news/article.aspx?articleID=071121_1__OKLAH53557
 http://www.woai.com/mostpopular/story/Brain-Dead-Man-Comes-Back-To-Life/aRiQdn4qmk66acqkFXMZvg.cspx
 ビルマ・トーマスさん(59歳 女性)
 http://abcnews.go.com/GMA/story?id=4923465
 http://www.exlog.net/archives/cat14/post_74/
 「脳死」臓器移植に反対する関西市民の会のホームページ

臓器移植法案の改悪の動き
 自民党は、民主・公明党とともに、子どもへの臓器移植に道を開くために、法案の改悪を今国会中に目指していることを明らかにしました。移植推進のA案,B案、法の改悪に歯止めをかけるためのC案の、3法案が国会に提出されています。4月7日に、衆議院厚生労働省小委員会で、これらの法案を巡って審議が始まりました。しかし、「人の死」に対し、国民的議論をつくさず、5月中旬に採決に持ち込もうとしています。
 現行法では、臓器提供する場合のみ、「脳死」を人の死と認めています。しかし、A案では、一律に「脳死」を人の死とし、本人が生前に拒否していなければ、家族の同意で臓器摘出できるようにする内容。また、現行法では、臓器提供年齢は、15歳以上としていますが、B案では、12歳以上に引き下げ、子どもの臓器移植に道を開く内容。C案は、現行法よりも脳死の定義と判定の厳格化を盛り込んだ内容となっています。そして、4案となる新案は、ドナーをいかに増やし、小児の臓器移植を進めるかという観点のみで、A案とB案の折衷案で出されました。臓器提供のときのみ、「脳死」を人の死とする死の定義は現行通りですが、年齢制限を撤廃し、0歳から提供を可能としています。15歳以上は、本人の意思と家族の同意、15歳未満は家族の同意のみで摘出できるという内容です。そして、C案の脳死判定基準の厳格化を排除し、脳死での臓器提供増加を進める内容になっています。

一律に脳死が人の死と認められたら、生きている間に臓器が摘出される
 A案では、「脳死」を宣告さると、本人が生前に臓器提供に拒否していなければ、家族が同意すれば、移植のために心臓や肺、肝臓などの臓器を摘出されるのです。あまり一般の人には知られていませんが、できるだけ新鮮な臓器が必要なので、心停止の前に手術場に移動されます。そして、全身麻酔をかけられて、心臓や肺などの臓器を移植チームの医師たちが次々と、摘出していくのです。「脳死」の人は、メスの痛みに反応して、血圧が上昇したり、動いたりすることが多いので、全身麻酔がかけられるのです。A案が認められれば、このような状態が、日常的に日本の医療現場で起こるのです。
 全身麻酔をかけなければ臓器を摘出できない「脳死」状態の人を、死体といえるのでしょうか。死体は、動いてはいけないのです。生きている人から臓器を摘出するために、殺人罪に問われないために、法律で「脳死」を死と合法化するのです。 

0歳からの臓器提供を認めたら、生還する可能性のある子どもを死に追いやる危険がある
 法案で、年齢制限を撤廃したら、生命力が強く、生還する可能性のある子どもを死に追いやることになります。小児の脳死判定基準を満たしていても、数日後や、数ヵ月後に自発呼吸が出現したり、脳血流が確認されたりした例が多数報告されているからです。これらの子どもたちは、脳死判定を覆したのです。脳死と判定されても、長期間生き続ける事例があります。その家族は、「移植を受けたい子の命が大事だから、脳死状態の子の命を捨てるのはおかしい。」と訴えています。06年5月、小児科学会は委員会で脳死判定の確実な方法が確立していないこと、被虐待死の紛れ込みを排除できない等として、小児の脳死移植に時期尚早の結論を出していました。また、学会では、虐待を見分けられる体制が整ったとしながらも、小児科医へのアンケート結果では虐待を診断できるが12%、診断できないが31%と、見分けるのは難しいことを示しています。親の意思で子どもの死を早める危険性が高まるのです。
 移植を受けたい人も、脳死状態の人も平等な命なのです。どちらも大切なのです。

小児科医は、救命治療こそ力を注ぐべき
 ドナーになる子供の多くは、交通事故や、外傷などの救命処置が必要です。医療崩壊が進む中で、小児救急医療の充実は大きな課題です。そちらにこそ力をそそぐべきではないでしょうか。脳死の患者を生み出さないことこそ医療の求めるべき姿だと思います。そして、末期の患者でも生きる権利は誰にも奪うことはできないのです。たとえ、「全脳死」から「植物状態」になっても、その人らしさを発揮し、回復するケアも発展しているのです。

脳死移植以外の治療法の開発に力を注ぐべき
 昨年心移植目的で渡航した子どもが、弁置換術をして帰国しました。長野県こども病院では、これまで心臓移植でしか救命できなかった拡張型心筋症の乳児に対して、「ペースメーカー治療を実施し、5人中4人が成功し退院している」ことが報道されました。移植以外の治療法はあるのです。医療予算削減ではなく、移植以外の治療法や研究などの体制整備が必要ではないでしょうか。

臓器移植法の改悪に反対しましょう
 「脳死」状態で「まだ生きている人」を殺してしまう危険性があるのです。
 移植を進めるために、人の死を早めてはいけません。「臓器移植法の改悪」に反対しましょう。

脳死は人の死ではない。
私は臓器移植法の改悪に反対します。
脳死判定後も意識があるのです。
一律に脳死が人の死と認められたら、生きている間に臓器が摘出されます。
0歳からの臓器提供を認めたら、生還する可能性のある子どもを死に追いやる危険があります。
救命救急医療に予算を拡大してください。
脳死状態で生死をさまよっている人の命を奪う権利は誰にもないのです。


国会議員に「臓器移植法改悪を可決するな」と要請するFAXを送ろう
5月連休明けにも、採決に持ち込まれる可能性があります
できるだけ、早くFAXしましょう

<衆議院厚生労働委員名簿>