野田政権は辺野古アセス提出をやめよ
田中沖縄防衛局長の差別暴言を徹底的に糾弾する

「対米公約」最優先の辺野古アセス評価書提出は許されない
 野田政権は、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設の前提となる、環境影響評価(アセスメント)評価書を、年内に強引に提出しようとしている。
政府、評価書26日にも提出=普天間移設、沖縄の反発必至(時事通信)

 沖縄では田中沖縄防衛局長の女性蔑視発言への怒りが爆発し、沖縄県議会や那覇市議会での反対決議、宮古島、西原、八重瀬、北中城の4市町村議会での反対・抗議決議、仲井真知事をはじめ市町村首長の拒否発言などが相次ぎ、辺野古移設反対が崩れる条件など存在しない。八重山の右翼的教科書採択に反対する集会など反基地の闘いと沖縄の歴史歪曲に対する闘いが結びついて反政府の深い世論と闘争が形成されている。
 基地の県内移設に反対する沖縄県民会議は、アセスメント評価書提出が予想される26日〜28日、沖縄防衛局職員が県庁に出向き評価書提出するのを県庁出入り口数カ所で警戒し、提出しないよう職員を説得する実力行動を県民に呼びかけている。
県民会議がアセス提出警戒行動へ(沖縄タイムス)
「沖縄に誠意示せ」評価書断念訴える 辺野古反対県民集会(琉球新報)

 だが日本政府は信じがたい強行姿勢を前面に押し出している。年内提出を崩していない。訪米した玄葉外相は12月19日、ヒラリー国務長官に対しアセスメント評価書の年内提出を改めて表明した。
評価書年内提出明言 玄葉外相、米国務長官に(沖縄タイムス)

 野田首相は9月、11月のオバマ大統領との首脳会談において、普天間飛行場の辺野古移転、TPP推進、消費税引き上げ、武器輸出三原則緩和など、国民の生活に直結し日本の主権や国是にも関わる重大問題について勝手に“対外公約”し対米追随を明確にした。そして日米同盟の強化をアピールするため、具体的な手みやげとして「アセスメント評価書年内提出」の約束を差し出したのである。日米同盟のために沖縄を犠牲にすること自体が、人権蹂躙であり沖縄差別である。
 全国から批判の声を集中し、なんとしてもやめさせよう。

辺野古移設はすでに破綻している
 辺野古移設はすでに破綻している。もともと米海兵隊が沖縄に駐留する戦略的意義など存在しない。従って「普天間の代替施設」など必要ない。これが大前提である。
 このことは、普天間基地移設先について「国外少なくとも県外」を政治公約としていた鳩山元首相が突如「県内移設」に転換した際、「抑止力」を理由としたことについてそれがつじつま合わせのための方便であったことを今年の2月に告白している。普天間基地の沖縄県内移設の最大の根拠とした「抑止力」は辺野古移設固執をとりつくろうために持ち出してきた嘘八百であったのである。
「海兵隊の抑止力は方便だった」と鳩山前首相発言(リブ・イン・ピース9+25)

 ところが鳩山元首相が辞任と引き替えに5月28日、日米安全保障協議委員会(2プラス2会議)が日米共同宣言を行い、自民党時代の1800メートルの滑走路を持つ辺野古案と寸分変わらない移設案を盛りこんだ。これ自体が「抑止力」という方便の上に建てられた虚像であった。しかもその計画案には住宅地の上を含む広大な範囲が飛行地域に設定されていることなどが隠蔽されていたのである。
沖縄切り捨て、基地の犠牲押しつけの日米共同宣言を撤回せよ(リブ・イン・ピース9+25)

 しかし約3ヶ月半後の9月12日、辺野古を抱える沖縄県名護市の市議会選挙で、基地移設反対を掲げる稲嶺市長支持派が過半数を獲得した。この時点で、辺野古移設は完全に破綻したのである。杭一本打たせなかった沖縄の抵抗と闘争が勝ち取った勝利であった。
 今回政府はアセスメント評価書提出方針にあたって3000億円といわれる沖縄振興予算とセットにすることで、沖縄県民に評価書提出を受け入れさせようとしている。しかしこのような薄汚いやり方もすでに破綻している。ハコもの建設では決して経済は好転せず、逆に基地の返還が商業地域の活性化や雇用増大に結びつくことがうるま市や那覇市などの例で実証された。こういった事情が、辺野古移設拒否の沖縄世論が容易に覆らない背景にもなっている。無論沖縄の経済環境は厳しく雇用情勢も劣悪だ。政府は振興策を基地問題とリンクさせるのではなく、政府がやるべき責任を果たさなければならない。

米議会グアム移転費削除は辺野古移設推進の根拠にならない
 米議会上院は12月15日、沖縄駐留海兵隊8000人のグアムに移転に関する1億5000万ドル余り(およそ120億円)の予算を除外した国防法案を賛成多数で可決した。あたかも辺野古移設が進まないとグアム移転も困難であるかのように報じられている。そして米国防総省は日本政府に対して改めて移設計画を進展させるよう促す声明を出した。これに乗じて国内の移転推進派は、“辺野古が進まないと米海兵隊のグアム移転もダメになる。そうすれば普天間返還も難しくなる”と恫喝を加え、辺野古移設を加速するよう主張している。しかしこれは本末転倒というものである。
クローズアップ2011:グアム移転費削除 普天間、袋小路に(毎日新聞)

 グアム移転費削減は米の財政危機に迫られたものだ。また、グアム移転自身米軍の軍事戦略の一環である。したがって米海兵隊のグアム移転と辺野古基地建設は関係ない。辺野古がダメだからグアム移転もダメになるというような問題ではない。また米国内では、沖縄海兵隊不要論がくすぶっている。オーストラリアへの海兵隊移転も報じられている。つまり、米海兵隊が沖縄に駐留する事に対して米国内からさえ批判が出ているのだ。予算を付けられないことで沖縄海兵隊のグアム移転が困難というのであれば、不要論の出ている米海兵隊そのものを縮小・削減し沖縄から撤退すればいいのだ。
在沖海兵隊「撤退できる」 米民主党・フランク氏(琉球新報)

 海兵隊のグアム移転と辺野古移設をわざわざリンクさせているのは、グアム移転を日本の要求であるかのように描き出し、その移転費用を日本政府からせびりとろうという米政府の戦術なのである。
[シリーズ]沖縄にも、大阪にも、どこにも米軍基地はいらない(その6)3兆円を日本側に負担させるために、「基地負担軽減」と「グアム移転」、「在日米軍再編」が突如リンク(リブ・イン・ピース9+25)

 普天間返還は、「世界一危険」という普天間基地を閉鎖し、1945年の土地の強制収容前の形に、つまり宜野湾市と地権者に土地を全面返還するということだ。勝手に奪った他人の土地を元の所有者に返せという当然の要求なのである。95年の少女暴行事件を契機に一気に火が付き、96年の日米共同宣言で橋本元首相とクリントン元大統領が宣言したものだ。
 一方辺野古基地建設計画は、もともと米にあった海兵隊の演習場建設計画である。ところが日米政府が96年に普天間返還を打ち出したときに、あたかも辺野古移設がその返還の条件であるかのようにリンクされ、ひとり歩き始めたのである。危険な普天間基地は無条件に閉鎖され全面返還されなければならない。

基地問題・沖縄差別の本質をさらけ出した田中発言
 田中聡沖縄防衛局長の女性蔑視発言は、沖縄への基地集中、辺野古移設(=県内移設)の強要・固執が、沖縄差別の以外の何者でもないということを示した。日本政府にとって、沖縄への基地集中は、沖縄の尊厳や意志を蹂躙することであり、レイプそのものなのである。
11月28日、防衛省の田中聡沖縄防衛局長が、報道陣との非公式の懇談会の場で、「一川防衛相が辺野古アセスを年内に提出するかどうか明言しないのはなぜか」と質問されて、「これから犯す前に犯すと言いますか」と言ったのである。このことを早速、琉球新報が暴露したのだった。
 この懇談会の場で田中局長が吐いた暴言は、これだけには留まらない。95年の事件について、当時のリチャード・マッキー米太平洋軍司令官が「犯行に使用した車を借りるカネがあれば、女が買えた」と発言したことについて問われ、田中局長は「その通りだと思う」と答えた。
 さらに、「(400年前に)薩摩に侵攻された時は(琉球に)軍隊がいなかったから攻められた。基地のない平和な島はあり得ない」と語って、沖縄県民の基地撤去の願いを無視する姿勢を鮮明にした。そして、「来年夏までに普天間飛行場の辺野古移設で進展がなければ、普天間飛行場はそのまま残る」とも発言、辺野古新基地を認めなければ普天間が残るだけだ、と県民を恫喝する姿勢を示したのだ(以上の発言は11/30沖縄タイムス朝刊より引用)。
「犯す前に言うか」田中防衛局長 辺野古評価書提出めぐり(琉球新報)
沖縄防衛局長を更迭 アセスで女性侮辱発言(沖縄タイムス)

 辺野古アセス提出をレイプにたとえるというのは、1995年の少女暴行事件をはじめとする、数限りない米兵の沖縄県民に対する凶行について、政府が何の痛みも感じていないことの証左である。事実、一川防衛相は、12月1日の国会で、95年の事件について「正確な中身を詳細には知らない」と答弁し、この事件が防衛省にとってはその程度の重みしかないことを、図らずも暴露した。 
 しかしながら、政治的緊張感が欠落した「素人」防衛相と違い田中沖縄防衛局長は「沖縄通」であったという。無知な官僚のオフレコ発言ではない。辺野古移転の使命を帯びた「沖縄通」の官僚がおもわず口走ってしまったこの言葉をわれわれはどう考えればよいのか。
「本音をもらした」「失言だ」ですまされることではない。敗戦と米軍の沖縄占領から66年、天皇が沖縄を売り渡した52年サンフランシスコ講和条約から59年、基地無し本土並みが裏切られた72年の沖縄返還から39年、沖縄の人々は、殺人・ひき逃げ・レイプなど数々の凶悪犯罪に日常的にさらされ、不当な日米地位協定で無権利状態に置かれ、宮森小学校空軍機墜落事故や沖縄国際大学ヘリ墜落事故などの重大事故の恐怖と隣り合わせの生活を強いられ、やんばるの森を破壊され、さらには危険な垂直離着陸機オスプレイの配備まで計画され、イヤというほど基地被害を押しつけられてきた。それを可能とする数々の密約が日米両政府の間で結ばれてきた。その沖縄に対して、新たな基地負担=新基地建設を押しつけるアセスメント評価書提出について、攻撃する当事者である日本政府とその責任者が自分の行為をレイプと表現したことは、まさに沖縄と「本土」=日本政府との差別的関係の本質の露呈だったのである。

野田政権は、辺野古アセス評価書提出をやめよ。普天間基地を今すぐ閉鎖せよ
 政治的焦点になっているアセスメント評価書は、辺野古に基地を作るための必要不可欠な手続きである。政府は、これを年内に提出し、沖縄県に3月末までに意見書を提出させ、6月末には政府が沖縄県知事に対して辺野古沖埋め立ての申請をするというシナリオを描いている。
 仮に沖縄県知事が埋め立てを拒否した場合でも、特別措置法を制定して、知事の許認可権を奪い取り、基地建設を強行することさえオプションに上がっている。しかし一方では、知事が「不承認」としても、特別措置法の制定ではなく裁判所へ訴え行政代執行するシナリオさえ検討している。いずれにしても、沖縄の人々の意志を踏みにじり権利を蹂躙し、いかに辺野古移設を押しつけるかという、まさしく田中元局長の発言通りのことを検討しているのである。
知事承認なく着工可能 辺野古で政府見解(沖縄タイムス)

 野田首相は、12月9日の参議院で一川防衛相の問責決議が可決されたにもかかわらず、防衛相を続投させ、辺野古アセス提出強行に突き進もうとしている。田中局長を更迭しただけですまそうというのである。
 だが政府としての責任の取り方は、辺野古を断念し、普天間の返還について米政府と交渉に入る以外にはない。
 野田政権は、辺野古アセス提出をやめよ。一川防衛相は辞任せよ。普天間基地を閉鎖させ、辺野古新基地建設を断念させよう。 

2011年12月22日
リブ・イン・ピース☆9+25

[抗議先]
野田首相(首相官邸)
TEL:03-3581-0101  FAX:03-3581-3883(目安箱)
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TEL:03-5366-3111 FAX:03-5269-3270
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