憲法9条に違反して攻撃兵器を持つな
北京・平壌を攻撃できる長距離攻撃ミサイル導入反対

長距離攻撃ミサイル導入が島嶼防衛のためというのは詭弁
 政府は朝鮮半島で緊張が高まる中、突然、長距離攻撃ミサイルの来年度予算での取得を発表した。長距離攻撃兵器の導入は、これまで他国の奥深くを攻撃する兵器を持たなかった日本政府が大きく方針転換を行ったことを意味する。これは敵基地攻撃能力の取得を意味するだけでなく、安倍政権が、これまでの「憲法9条に反するから」とできなかった他国に対する先制攻撃、先制敵基地攻撃を可能にする兵器の導入に踏み切ったことを意味する。これらの兵器の導入は、戦争法(安全保障関連法)制定の下で進められる自衛隊強化の路線の違憲性を象徴的に示している。
 記者会見で小野寺防衛大臣はこの兵器が敵基地攻撃用の長距離攻撃ミサイルであることを否定し、「島嶼防衛」や「イージス艦防衛」が目的であると説明した。これは全くの虚偽である。時事通信は以下のように報道した。
 「小野寺五典防衛相は8日の記者会見で、自衛隊機に搭載する長距離巡航ミサイルの導入を正式表明した。北朝鮮をはじめ日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを踏まえた対応で、防衛省は2018年度予算として取得費など計21億9000万円を財務省に追加要求した。
 巡航ミサイル導入は、北朝鮮の弾道ミサイル迎撃を担うイージス艦の防護や南西諸島の防衛が主な目的。小野寺氏は「敵に近づくことなく、わが国に侵攻する敵に対処することで、より効果的に各種作戦を行うことが可能になる」と強調した。
 導入が固まったミサイルは最大射程約900キロ。日本領空から北朝鮮が射程圏内に入るが、小野寺氏は「あくまでも、わが国防衛に使用する」と語り、敵基地攻撃を想定していないことを強調した。
 追加で予算要求したのは、ノルウェー製の対艦ミサイル「JSM」(射程約500キロ)の取得費21億6000万円と、米国製の対地ミサイル「JASSM−ER」(約900キロ)と対艦ミサイル「LRASM」(約900キロ)の自衛隊機への搭載に向けた改修の調査費3000万円。(2017/12/08-21:05)」。
 導入されるJSMミサイルは空対地、空対艦ミサイルであり、JASSM−ERミサイルは空対地ミサイルである。どちらのミサイルも航空機から発射するミサイルで、相手の国近くまで進出した航空機から発射すれば相手国の奥深くを攻撃出きる敵基地攻撃用の長距離攻撃ミサイルである。現在の導入の目的が直接的には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、さらには中国を念頭に置いたものであることは間違いがない。JASSM-ERは日本上空から発射しても平壌に届くし、黄海上空から発射すれば北京に届く。北朝鮮のノドンミサイルよりも遠距離を攻撃できるミサイルだ。安倍政権は北朝鮮のミサイルは脅威だと非難するが、その裏で自分自身が中距離攻撃用の巡航ミサイルを導入するのである。
 対艦攻撃用のLRASMミサイルはまだ米でも調達も始まっていない兵器である。しかも、射程が900kmに及ぶ対艦ミサイルは今の自衛隊には運用できない。900kmも先の艦船に向かって発射しても、到達時には相手は数十キロも離れたところにいる。その動きを探知し、ミサイルに伝える装備は自衛隊にはない。
 小野寺防衛大臣が主張するようなイージス艦の防護や南西諸島の防衛はとうてい使えそうもない。

敵基地攻撃能力の獲得は憲法違反との従来の政府見解を覆すもの
 従来、政府は敵基地攻撃能力そのものは憲法に違反しないとしたが、同時に平素から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは憲法の趣旨に反するとしてきた。
 「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、例えば、誘導弾などによる攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」(1956年2月29日 衆議院内閣委員会 鳩山総理答弁船田防衛庁長官代読)。しかし、一方、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは憲法の趣旨とするところではない」(1959年、伊能繁次郎防衛庁長官)との見解も表明してきた。そして、今日まで、そのための兵器を日本政府は導入・装備してこなかったのである。今回の決定は安倍官邸と防衛省だけで行ったが、歴代政権の憲法の趣旨に反するから保有しないという見解を勝手に放棄するものである。もちろん、他国に対する先制攻撃が憲法に違反することは言うまでもない。
 しかし、今回の長距離攻撃ミサイルの導入はこの政府見解を大きく超えて、先制攻撃の為のものである。すでに自民党、政府与党内では長距離攻撃能力取得、さらには一定の先制攻撃に道を開く動きが出ていた。
「これは先制攻撃ではない。日本を攻撃する明々白々な事実があって、それに対して反撃するという意味で、一番ミサイルが撃ち落とせる確実な場所が発射する前の相手のミサイル基地。こういう能力を持てば、北朝鮮からすれば攻撃を先にすれば、自分が撃ったものは止められ、かえって多くのものが飛んでくるかもしれない。抑止力になると思っています。」(小野寺五典元防衛大臣(当時)2017年6月22日(木)NHKクローズアップ現代「岐路に立つ防衛政策 〜“敵基地攻撃” “防衛費”は〜」)

米の指揮の下で先制攻撃=侵略戦争に加担することになる
 しかし、これは「日本を攻撃する明々白々な事実が」あることを前提にしている。絶対にミサイル等で日本を攻撃してくるから、ミサイル基地を先制攻撃しても自衛権の範囲だという主張だ。ところが、ミサイルは発射して、頂点に達するまではどこが攻撃目標かはわからない。さらに、発射するまではどの方向に向かうのかさえわからない。それを発射前から日本に向かうのは明々白々などあり得ない。この間の一連の北朝鮮によるミサイル実験でさえ、日本が独自に探知したものはないし、そんな能力もない。であるとすれば、あり得るのは、米軍の情報によって知り、それが日本に向かうことが明々白々と判断し、発射される前に長距離ミサイルで攻撃することだ。それが正しいかどうかは米軍しかわからないし、何よりも発射前に米軍がどこに飛ぶか探知できた例はない。つまり、政府が導入しようとしている長距離攻撃ミサイルは、看板に「攻撃されるのが明々白々なので先に基地をたたく」=「先制的自衛」とあるが、それは全く不可能で、実際には米軍の指揮による先制攻撃への参加のためとなる。いうまでもなく憲法違反である。
 では、これらの長距離攻撃兵器は、第1撃で攻撃された後に、これ以上の被害を防ぐために敵基地攻撃で使うのか。そんな事態は考えられない。第1に、米軍は相手の国と軍事的政治的緊張関係にある場合には、必ずと言っていいほど先制攻撃を仕掛けてきた。前に述べたように、事実上米軍の指揮系統に組み入れられている自衛隊が、米軍の先制攻撃が始まるときにそれを見過ごして、相手の国が反撃するのを待つことはあり得ない。
 第2に、これらの巡航ミサイルは亜音速で飛行し、飛んでくるのが分かっていれば撃墜も可能だ。だから米軍がイラク戦争やシリア攻撃で使ったように、巡航ミサイルは奇襲攻撃(先制攻撃)で使うのが最も効果的な兵器だ。さらに、戦争が始まれば攻撃目標は破壊される前に移動する。結局移動する前に、先制攻撃で撃破するしかないのだ。第3に、自衛隊も政府も戦争の危機が高まり、米軍が開戦する(これは必ず事前に知らされる)状況の下で、長距離攻撃兵器を持ち、攻撃地点の座標などの情報を米からもらっているときに、先に攻撃しようという衝動に抗せられるとは思えない。結局、これら長距離攻撃兵器の保有は憲法9条に違反する先制攻撃へ繋がることは避けられない。

国会の議論も経ず、官邸と防衛省が独断で決定する異常
 これらの導入経緯もきわめて異常だ。この長距離攻撃ミサイル導入が、国会での議論も、政府部内での議論も経ずに、官邸と防衛省が北朝鮮情勢を利用して突然導入決定を行ったものだ。現行の国家防衛戦略にも防衛大綱にもこれらの兵器の取得は何一つ入っていない。自衛隊の中期的な装備計画に入っていなかったものを突然持ち込んだのである。これが今回の3つの長距離攻撃ミサイルと総額1600億円に上るイージスアショア(陸上設置型イージスシステム)である。とりわけ、憲法と従来の政府見解に関わる問題を、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは憲法の趣旨とするところではない」(1959年、伊能繁次郎防衛庁長官)などの答弁を変えもせずに突然導入するのは異常なやり方と言うしかない。
 さらに、今回取得予算を組んだJSMミサイルも、調査費を組んだJASSM−ERミサイルも、LRASMミサイルも、現状では自衛隊のどの航空機にも積めない。米軍でも装備が始まっていないLRASMミサイルは当然として、JSMミサイルミサイルもJASSM−ERミサイルも米のF15E(攻撃用)やF35最新型(ブロック4)には搭載し運用できるが、日本のF15積む為には戦闘機の改造が必要で、今まで日本に入れたF35ではシステムがブロック3で古いので、今後導入F35にしか搭載できない。今は使えない・・・こんな装備を国会審議などすっ飛ばして導入を決めるのは異常極まると言うほかない。

2015年の新ガイドラインと戦争法によって自衛隊が攻撃的軍隊に
 最後に、2015年に成立した戦争法及びそれに先立つ日米ガイドラインにおける変化が現在の敵基地攻撃能力と長距離攻撃巡航ミサイル取得に直接つながることを考える。日本のメディアの一部は、日米安保によって「日本は防勢作戦を、米軍は攻勢作戦を分担する」とされており、それを踏み越えた対応であると政府を批判した。しかし、現在のガイドラインは政府の長距離攻撃兵器保有を後押しする方向に変わってしまっている。侵略的、攻撃的な軍事力の整備、これが集団的自衛権承認、戦争法制定以降の日米安保の方向なのである。
 1997年の旧ガイドラインは、日米の作戦構想として、(1)航空侵攻防衛、(2)海上防衛、(3)陸上侵攻防衛、(4)弾道ミサイル防衛のそれぞれの場合について、「日本は防衛のための作戦を実施する・・・米軍は自衛隊の行う作戦を支援するとともに、機動的打撃力の使用を伴う作戦」を行うと記されていた。ところが、2015年の新ガイドラインでは上の4つの作戦で米軍が機動的打撃力を使用することが削除されている。そして新しく「領域横断的な作戦」=日本に対する全面戦争の場合に限って、(米軍が)「打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」とされ、さらにその場合でも自衛隊が米軍を支援するとされたのである。つまり、米軍が攻勢作戦を行うのは日本に対する全面戦争が行われる場合だけであり、それ以外は日本が中心に対応すると役割分担されている。したがって、全面戦争以外では、攻撃兵器も含めて攻勢的な作戦を自衛隊が行うことが前提になっている。例えばミサイルが飛んでくるだけ(?)の場合、ミサイル基地を発射前に破壊するのは自衛隊の役割であり、今回のミサイル導入はその取り決めに従った動きなのである。
 集団的自衛権と戦争法成立以降、日本の軍事力の侵略性、攻撃性がますます強まっていることを今回の長距離攻撃巡航ミサイル導入が証明している。真っ赤なウソを臆面もなくつきながら侵略的な道に進もうとする安倍政権と新しい軍事計画を徹底的に批判することが必要である。

2017年12月20日
リブ・イン・ピース☆9+25