[翻訳資料]なぜいまだにV-22オスプレイは危険なのか?

 ここで紹介する翻訳記事は、オスプレイの欠陥や事故、軍産複合体の黒いもくろみを暴くサイト「オスプレイ・スキャンダル」に掲載された「Why the V-22 Osprey is Still Unsafe?(なぜいまだにV-22は危険なのか?)」である。
Why the V-22 Osprey is Still Unsafe?

 先に私たちが翻訳した、米国防省国防分析研究所元主任分析官レックス・リボロ氏による「なぜV-22オスプレイは安全でないか」(本記事の中では、「Lingering Safety Concerns Over V-22(V-22の長期にわたる安全性への懸念)」として紹介されている)について、彼の報告が触れていないオスプレイの重大な問題点を補足している。リボロ氏の報告と同様、事故時の米軍パイロットなどの救命にしか関心が払われていないとはいえ、想像力を働かせば、ここで指摘された欠陥による事故がおこれば、甚大な被害が住民や環境に及ぶことはすぐにわかることだ。
 特に記事で注目したいのは、後半で4つ指摘している問題の最後である。まさにフロリダでの事故を予言するかのような指摘がなされている。
 「第4番目は、V-22は、近くのV-22あるいはヘリコプターの吹き降し気流または後流によって、一方のローターの揚力が他方のそれより増えるため、急横転しやすいという問題である。そして、実際に急横転を引き起す。」
 そのほかにも、機体が複合材料(グラファイト+エポキシ樹脂)で作られているため、事故で火災となると一気に炎上し、猛烈な毒性のあるダイオキシンを発生するとか、ボーイング/ベル社の、滑空時は重いエンジンを翼ごと機体から脱落させ胴体を不時着させる「大規模な機体分解」があるから安全などというという苦し紛れの説明などは噴飯ものである。
 オスプレイは強風や下からの吹き返しに極めて脆弱で、飛行性能は劣悪であり、天候が変わりやすくいつどこから強風や突風が吹くかわからない山間部の低空飛行などは自殺行為と言うほかない。
 この記事も、オスプレイの配備と飛行訓練がいかに危険かを更に確信させるものである。米軍はいまだに今年10月沖縄配備の方針を変えていない。オスプレイの危険な事実を広く知らせ、反対の世論と運動を拡大していこう。
 この「オスプレイ・スキャンダル」の他の記事も、オスプレイの問題について様々な角度から鋭く指摘しているので(例えば「軍を挙げての事故隠し」の実態や、「マニュアル通りに飛ぶと事故を起こす」、2010年のアフガニスタンの事故の分析など)、順次紹介していきたい。

2012年9月3日
リブ・イン・ピース☆9+25


[翻訳資料]なぜいまだにV-22オスプレイは危険なのか?
〜リボロ氏の報告書で触れられていないいくつかの問題について

はじめに:
 海兵隊少将クレイ・コンフォートが1987年に引退したとき、彼は自身の老後の目標の一つはV-22オスプレイの開発を終了させることだと友人に語っていた。コンフォートは海軍の大学院で航空工学の理学修士号を取得しており、ティルトローター機の設計の欠陥を理解していた。
 彼はまた、V-22ティルトローター機の構想が策定されていた海兵隊の航空本部で次長を務め、後には第3海兵航空団の司令官を務めた。
 コンフォート少将が2004年に他界したとき、海兵隊をV-22から救う彼のひそかな試みは失敗した。彼は最後の努力として、2003年の非公開の研究のコピーを防衛分析研究所(IDA)からG2mil(「オスプレイ・スキャンダル」のサイト)に送った。
 IDAは、ペンタゴンに対して、独立した専門家による軍事問題の分析結果を提供する組織である。
 この海兵隊資金によるレポート「V-22の長期にわたる安全性への懸念」(注:レックス・リボロ氏による「Lingering Safety Concerns Over V-22」を指す )は、オスプレイが近年のマイナーな修正を経たのちも、依然として基本的に安全でないままだと断言している。
 コンフォート将軍の努力にもかかわらず、そして、G2milへの投稿で広く周知されることになったIDA報告にもかかわらず、V-22開発プログラムは継続された。
以下はリボロ報告が触れなかったV-22に関するいくつかの他の深刻な安全問題に関するものである。

レックス・リボロ氏の報告書が触れていない他の危険性について
プラスチックの機体は可燃性
 先年、ボーイング社製の最新型旅客機が安全でないとして、同社のトップエンジニアの1人ヴィンス・ウェルドンが、「ダン・ラザー・レポート」を明らかにした。
 この最新のボーイング787「ドリームライナー」は、重量を軽減するために、複合材料(すなわちプラスチック)製の機体となっている。この材料を戦闘機など軍用機に使用することで、機体の構造重量を減らし、パフォーマンスを向上させることに成功した。しかし、この複合材料(グラファイト+エポキシ樹脂)は可燃性で、燃えるときに中毒性の煙(訳者注:エポキシ樹脂に含まれるハロゲン化合物によるダイオキシン)を発生させる。
 しかし、戦闘機のパイロットには、直ちに燃える機体から脱出できる射出座席がある。
 ウェルドンは、ジェット旅客機の小さな火災が機体構造に火をつけ、その火が時速数百マイルで飛行する機体の気流によりたちまち広範囲に燃え広がることを危惧している。
 複合材料の航空機の着陸事故では、複合材料を使用した機体の部材は粉々に砕け、乗客を殺し、機体外側の空気はすぐに火を大きくすると言っている。
 その例が、今年(2008年)発生したB-2爆撃機のグアムでの離陸時の事故である。
 離陸時に、同機のコンピュータは不完全なセンサー情報のため誤動作し、機体を鋭く傾けて翼端を地面にたたきつけてしまった。その後水平に戻って、滑走路端の草の上をすべって止まった。実際の損害は小さかったが、しかし、小さな火災が発生して複合材料の機体に火をつけた。
 消火隊が数分で到着したが、火はあっという間に広がって、B-2を残骸にした。
 V-22オスプレイも複合材料/プラスチックの機体構造(より重くて砕けない伝統的なアルミニウムとグラスファイバー材ではなく)である。複合材料の機体構造が商業旅客機にとってあまりにも危険であるとボーイングのウェルドンが考えるなら、彼は軍用輸送機にそれらを利用することも正気でないと考えるべきだろう。
 煙が有毒であるため、海軍安全センターは事故時に救助隊に対して燃えている複合材料の航空機の消火活動はやめるように命じることになる。
 機関銃弾には、しばしば曳光弾が組み込まれている。そのうちの一弾でもV-22に命中したら、それは機体に火をつけるかもしれない。炸裂する対空火器とRPG(対戦車擲弾発射器)さえも、V-22に容易に火をつける。潤滑油と油圧配管からの作動油の漏れは、V-22で多数の火災を引き起こした。少なくとも2つのケースでは、それらはエンジンナセルに火をつけ、エンジンと主翼を破損させる火災となった。運よくこれらの事故では、地表近くだったため、パイロットはすばやく着地させられた。
 クワンティコ(バージニア州)近辺のV-22の事故では、複合材料の主翼を瞬く間に焼き尽くす火災が発生した。複合材料とプラスチック製の機体が完全に燃え尽きたため、2000年の2つのV-22事故現場の写真はほんの少しの破片しか写っていない。
 V-22の胴体と翼はそれぞれ一体成形されているため、小火災でさえ破滅的な損害をもたらし、修復は不可能となる。少なくとも3機の V-22が、翼の破損のため、ひそかに廃棄されている。

V-22の胴体は、耐衝撃性をもたない
 ティルトローター機は、V-22のように複合材料の機体構造と部品を採用するなど数多くの妥協によって重量を軽減しても、その能力は貧弱である。
 当初の計画では、防弾と戦闘車両の搭載のため、強靭なケブラー製の床構造が求められていた。
 しかしそれは却下された。複合材料の採用と同時になされたその変更決定は、不時着時に機体構造の破損や崩壊なしに胴体の生残性を確保することを定めた海軍の安全基準を守れない結果となった。
 映画「ブラックホーク・ダウン」は、ブラックホークがハードランディングしても壊れず不時着できるヘリコプターであることを示している。

 これらの結果、ベル-ボーイングは、「大規模な機体分解」というアイデアを発明した。
 そのアイデアとはこうである。
 V-22で制御可能な事故が起こって、パイロットが滑走路上に固定翼機のように着陸しなければならない場合は、プロップローターを前方に向け、飛行機モードにしなければならない。この場合、大きなプロップローターのブレードが最初に地面をたたくことになる。その結果、両翼が、重いエンジンとともに機体から脱落することになる。これによって重量物が先に落下するため、胴体は非常に軽くなって2秒後に地面にぶつかるとベル-ボーイングは主張する。
 彼らの計算では、これによってV-22が海軍の安全基準を満たすとしている。
 この「発明」は、これまで示されていなかった。
 V-22が飛行機モードにあり、着陸のために開けた場所が利用できるときにのみ、それは可能である。しかし着陸時にパイロットがプロップローターをヘリモードにしている時は、パイロットにとってこれは難しい挑戦となる。若干のエンジン出力がまだ残っているなら、彼らは本能的に対気速度を減らそうとするだろう。そして、V-22がゆっくりと着陸するか、ローターを上向きにしてヘリコプターモードで離陸する間、ほぼ地上砲火の攻撃を受けるだろう。
 V-22が飛行機モードに切り替える間に2,000フィート下降してしまうので、それ以下の高度では「大規模な機体分解」なしに地面を打って、海軍の基準をだますことはできないだろう。そのうえ、飛行機モードでの着陸は、大きく平らで開放的な地域を必要とするので、「大規模な機体分解」は市街地や、山や森林では不可能だ。最後に、V-22のNATOPS(海軍の航空訓練及び運用手順標準仕様書)は、地上に接地するときは、車輪が格納されたままでなければならないとしている。それは溝を掘って、後部胴体を転覆させる。
 結局、V-22は、長く堅い滑走路に着陸するときにだけ、しかも両方の翼がきれいに外れるときにだけ、海軍の安全基準に合致した「大規模な機体分解」が起こる可能性があるということだ。それが上記の条件に合わない他のどこかに不時着しなければならない場合は、胴体は破壊され、炎上するだろう。
 もう一つの問題はV-22の短く分厚い翼が、普通の飛行機と比較してより高い抗力を発生させることである。
 これは滑空比4というひどい結果となる。
 すなわちそれは、4フィートの前進ごとに1フィートの高度を失う。一般的な飛行機は、より大きな翼と、10台後半の滑空比を持つ。その結果、V-22がエンジン出力低下または損失状態になったとき、降下速度は通常の飛行機の3倍となり、パイロットが着陸地点を選ぶための時間的余裕はなくなり、そして運よくパイロットが適切に着陸できるとしても、はるかに果敢な「フレア」(訳者注:接地直前の引き起こし操作)をやり遂げる必要がある。

 関連した問題として、耐衝撃座席導入の遅延問題がある。最初の120機の V-22は海軍の衝撃安全テストに適合しない軽量座席をつけて数年前に配備された。その後、ベル-ボーイング社が費用を負担しないまま、新しい座席が政府の出費で購入されて、装着された。
 これは無意味だった。というのは、座席はテストの結果、V-22の軽量構造の胴体から簡単に外れて跳ね上がり、その軽量な床に激突してしまったのだ。ベル-ボーイング・チームは解決策をいろいろ探したが、どの対策でも、V-22を再設計して、機体構造を補強するために2千ポンドの重量増加となるため、採用されなかった。
 この問題に関する詳細は、2005年のNAVAIRレポートで見ることができる。また、GAO(会計監査院)の2008年3月のレポートはこの深刻な安全性の問題に言及して、量産型V-22が耐衝撃性能を満たさず、耐衝撃性を放棄しているにもかかわらず黙認されていると述べている。
 もしベル-ボーイング社が、V-22の耐衝撃性を証明しようと思い立ったなら、格納庫内に居座っている多数の退役したV-22を使用して、FAAの標準的な落下試験を実施できただろう。しかしその結果、座席は跳ね上がり、バラバラに破壊され、座席に縛り付けられたダミー人形もほうりだされるか、あるいは互いにぶつかって潰しあうことになりかねない。これはまずい結果になり、ひいては自ら民事訴訟被害のお膳立てをしてしまう羽目になることがわかったので、決して実行されることはなかった。

NATOPSは誇大宣伝
 V-22に関する海軍の航空訓練及び運用手順標準仕様書(NATOPS)に掲載された図表が不正確であるということを知って、多くのパイロットがショックを受けている。これは、安全な運用のために信頼されているパイロットのユーザー・マニュアルである。
 この原因は、ベル-ボーイング社の経営陣が、NATOPSの航続範囲と搭載量を示す図表に、古い楽観的な「計画」段階での性能データを挿入すると決めたためで、実際にV-22が示した能力は悲惨なものだった。
 新米のV-22パイロットは、NATOPSが誇大宣伝だと聞かされることになった。しかし、マニュアルがあてにならないということは、経験と推測を重ねてV-22の限界を学ばなければならない搭乗員を危険にさらすことになる。

危険な油圧システム
 V-22デザインに対する基本的な危惧の1つは、並列配置のローター設計だった。(NATOPSメモでは:「ティルトローターの固有の不安定性のため」としている)
 V-22は、2基のエンジンと角度変更システムの制御が何らかの理由で遮断された場合、横転に入りやすい。
対照的に、ヘリコプターでは、ローターは、機体の重心の近くの胴体に取り付けられている。油圧系統またはエンジンに故障が生じた場合、大きなローターはエアブレーキとなって垂直に降下し、通常の場合、頑丈な車輪によりハードランディングという結果となる。
 加えてV-22は、複雑な油圧ナセル角度可変メカニズムをもち、非常に複雑な分割型の双エンジンナセルの連結シャフトは胴体上でカーブしていて、主翼内でも柔軟性を確保しなければならないため、14もの関節で構成されている。
 H-46とH-47ヘリコプターもシャフトを備えているが、しかし、それらは金属製の一体構造であり、V-22のように各シャフトを相互に接続する14個の軽量な複合素材/プラスチック製の関節は持っていない。
 このような複雑な機体構造のため、V-22は「3重に冗長性のある油圧システムを有する」というセールストークで売り込まれている。
 しかし、2002年の国防総省のIG報告は、24本の重要な油圧ラインが実際は2重の冗長性しかなく、障害が基本機構とバックアップ機構の両方で発生した場合にはまったく冗長性がないことを明らかにした:
 「V-22の油圧システム(それは3つの独立したサブシステムから成る)は、油圧をのローター制御システムと各操縦舵面に供給する。全3系統のサブシステムは、油圧配管のネットワークと各々のサブシステムの各構成機材に作動油と圧力を供給するホース(油圧配管)を含んでいる。
 漏れなどの障害が3系統のサブシステムの油圧配管内でしか起こらないなら、この設計は「3重に冗長性を持った油圧システム」といえるだろう。3系統のサブシステム内で圧力または作動油の漏れが見つかったら、V-22のソフトウェアと特別設計のハードウェアは、損傷した油圧システムを自動的に隔離する。
 しかし、V-22の油圧システムは、(3系統のサブシステムの範囲外の)各ナセル内の24本の共通油圧配管では2重化されているだけである。そしてこの共通油圧配管は、切換隔離弁、サブ切換隔離弁、ローター・スワッシュプレート作動装置の間にある。これらの油圧配管での障害は隔離できないので、この共通配管内で損傷が発生した時は、そのナセル内の主油圧装置とバックアップ用油圧装置の機能が低下する。」

 最近のV-22の再設計では、この欠陥は解決されなかった。これはまた2000年12月の事故(2000年12月11日に海兵隊訓練部隊VMMT-204部隊所属の18号機(MV-22B)が、夜間飛行訓練中に森林地帯に墜落し、搭乗していた海兵隊員4名全員が死亡した。)が1か所の油圧漏れによって起こった可能性を示している。
V-22の開発者は、この事故の原因は「ソフトウェアの異常」の結果であったと主張した。しかし、事故は油圧の低下により、V-22のソフトウェアが飛行を継続できなかったと考えられる。なんとかエンジン出力を絞り出して飛行しようとしたが失速したと、海兵隊のブラント将軍は記者会見で語った。
 http://www.defenselink.mil/Transcripts/Transcript.aspx?TranscriptID=1054

 パイロットが何度もコンピュータのリセット・ボタンを押したので、「ソフトウェアのエラー」ということにしたのだろう。しかし実際は、急速に油圧が低下したため、コンピュータが飛行機を飛ばすのに悪戦苦闘していたのだろう。これは、V-22の軽量な5000psiの高圧油圧システムのもう一つの欠点で、作動油は従来の3000psiシステムの2倍速く漏れる。
 2007年12月に、V-22の油圧系統から漏れた作動油はエンジンナセルに流れ、高温の排気で燃え上がり、V-22を全損させた。その機体は廃棄された。
V-22の開発部門は認めないが、ただ1箇所の油圧漏れが2000年12月のV-22の事故の原因となったし、24本の共通配管のいずれかで漏れが起こると、そこでは配管をシステムから隔離できないので、他の事故を引き起こす原因となる。パイロットが地表近くで飛行していてすぐ対応できれば、すべての作動油がなくなる前に、着地できるだろう。
付け加えれば、5000 psiの油圧システムでの作動油の漏れは、しずくとなって落ちるのではなく、高圧のため霧状に噴出して空気と混ざり、引火しやすくなる。油圧系統の故障が通常のヘリコプターで発生した場合、火災の発生や、急横転して地面に頭から激突するようなことはありえない。

オートローテーション能力の欠如
 この点については、先のリボロ氏のIDA研究で詳述されている。
 基本的なオートローテーションの動画はyoutubeで見られる。
 http://www.youtube.com/watch?v=8OXM6dJOzC4&mode=related&search=
 FAA(連邦航空局)は、最大総重量(すなわち最大燃料で、最大搭載量での)オートローテーション能力をヘリコプターに要求する。その例がこの動画である。↑

 FAAのためにオートローテーション実験を実施している新しいS-92(大型のブラックホーク)の動画はここにある。↓
 S-92はV-22の半分のサイズであるが、V-22より遠く飛べ、2倍の搭載能力を有している。
 http://www.youtube.com/watch?v=4JqmoWAhv5g
 動画でわかるように、S-92のパイロットは、最大総重量での飛行のため機首上げ姿勢をとらねばならなかった。エンジンはアイドリング状態で、ローターはエンジンと切り離してフリーにされ、エンジン出力は断たれている。
 これを行ったのはテストパイロットで、おだやかな天気のもとで滑走路上に5ノットの降下速度で着陸した。しかし忘れてはならないのは、このテストがS-92の最大積載量時(すなわち空虚状態の2倍の重量)で実施されたことだ。ヘリコプター・パイロットは、オートローテーションの練習をしばしば行うが、最大総重量に近い状態で行うことはない。

 このオートローテーションを(V-22の開発部門が暗黙のうちに認め、OPEVALも確認しているように)、V-22は実行できない。
 一般に飛行機のエンジンが故障したとき、通常パイロットには、数マイル先の滑走路か開けた土地まで滑空して着陸するために、エンジンの再起動を試みる数分間の時間的余裕を持っているものだ。
 ヘリコプターには、オートローテーションで安全に制御された降下を可能とする低い円盤荷重の大きなローターがあり、パイロットは滑らかに着陸するために最後の数秒間機首上げ操作を実行できる。これはヘリコプターでの安全な操縦方法であり、多くの命を救っている。
 ボーイングは、現代のエンジンが同時に2基故障する確率は10億飛行時間に1回なので、重要ではないと主張している。しかし、2005年にボーイングCH-47Dは、イラクで両エンジンを失った。低空飛行中だったため、フルオートローテーションで着陸するには高度が足りず、ハードランディングとなった。乗組員は軽傷を負ったが、V-22だったら彼らは死んでいただろう。→

晴天限定の航空機
 V-22は運用サービスを開始した初年度中は、基地から基地に飛行機モードで飛ぶことで、致命的な事故を回避できた。
 その間にヘリコプターモードで運用した稀なケースでは、ほんの少しのペイロードしか搭載せず、天気の良い日を選んで飛行した。
 海兵隊はまだヘリコプターでの作戦のためのCH-46Eを多数所有していたので、これは可能だった。
 事故時の損害データは、FOIAが必要と認めて要求したとき以外、海兵隊がV-22の事故についてのデータを公開しなくなったため、隠されたままになっている。事故情報がリークされない限り、事故は「未発生」となっている。
 昨年(2007年)、「フォートワース・スター・テレグラム」紙のボブ・コックス記者は、V-22の事故に関連した火災の煙を吸入して入院した海兵隊員を目撃したことから、深刻なV-22の火災事故を知った。
 事故の損害情報は、一度海軍安全センターがインターネット上に掲載したため、すべての人が見ることができるようになった。これらは、搭乗員や整備員に、最近の事故の原因についての簡単な情報を提供した。オスプレイの批判者もV-22の問題について主張するためこれらのデータを使用し始めたので、それへのアクセスは将校のみに制限するよう海軍に圧力がかけられた。
 CH-46Eが引退を開始して、V-22がヘリコプター用の任務で飛行し始めてから、V-22固有の4つの欠陥によって、事故回数が急激に上昇し始めた。

 第1に、サイドスリップを伴うピッチアップ(PUWSS 訳者注:横滑りを伴う頭上げ)は、V-22に固有の問題である。
 垂直離着陸モードや飛行機モードへの移行時にローター角度を上向きにしたとき、V-22の強力な吹き降し気流は突然尾翼に当たり、鋭く機首を持ち上げるとともに、機体を一方に押しやろうとする作用をもたらす。
 テストパイロットはこの不穏な動きを察知したので、飛行制御ソフトウェアは改修され、これが起こった場合、機首を自動的に下げるようになった。これは無風状態でのみ効果的だが、強風時に作動した場合や、PUWSSをコンピュータが自動的に補正している間に操縦しなければならない場合はむしろ危険となる。
 第2の問題は、ローターを並列配置したV-22の設計により、急横転を避けるためにコンピュータは2つのローターの推力を完璧に同調させなければならないという複雑さが付け加わったことである。
 ヘリコプターがより低空を飛ぶとき、ローターからの吹き降ろしが地面に当たって、ホバークラフトのようなエアクッションを作り始める。これは、地面効果内のホバリング(HIGE 訳者注:Hover In Ground Effectの略)と呼ばれている。
 V-22がそうした低空を飛ぶとき、一つのローターは地面効果外のホバリング(HOGE 訳者注:Hover Out Ground Effectの略)なのに、他方のローターは建物または船のデッキ上にかかってHIGEに入るかもしれない。そしてコンピュータは、このアンバランスを自動的に修正しなければならない。

 第3の問題は、CH46Eより25%容積の少ないV-22の四角い胴体(それは従来の円筒形状に比べてより多い内部容積を提供する)である。これは強風を受けたとき横方向に押しやることになり、その状況はエンジンナセルと垂直尾翼の大きな側面形状によってより悪化することになる。
これは強風時のホバリングに、オスプレイを「風見鶏」状態にして転回させる危険性がある。V-22は強風の中でのホバリングでは80%以上のエンジン出力を必要とするが、もし積載物が多くて余剰出力がない場合、操縦不能に陥りかねない。
 2005年のNASAの研究は、この問題を詳細に分析している。
 これは、常に強風があり、しかも艦橋と艦体による風の遮断と、HIGE/HOGE問題を抱えながら正確に甲板の指定スポットに着艦しなければならないV-22に固有の問題である。
 V-22の並列配置のローターは巨大なCH53Eよりさらに数フィート広いため、甲板の端からちょうど5フィートの場所に、問題の片方のローターはHIGE、もう一方はHOGEという形で着艦しなければならない。甲板から舷側に突き出た重いエンジンナセルと、強風と横揺れする甲板は、V-22を艦から海に転落させる原因となるかもしれない!
 これが、なぜイラクで、V-22が海軍の任務部隊の一員として揚陸艦上に配置されず、広大な空軍基地に配備されたのかという理由である。より大きい問題は、下方に直接噴射される高温のジェット排気で、それは金属性の甲板を変形させ、近づく全員を焼くことになる。この解決不能の問題は、1999年の艦載テスト以来知られることとなった。

 第4番目は、V-22は、近くのV-22あるいはヘリコプターの吹き降し気流または後流によって、一方のローターの揚力が他方のそれより増えるため、急横転しやすいという問題である。そして、実際に急横転を引き起す。(訳者注:2012.6フロリダでの訓練飛行中の事故
内部のNAVAIR報告 訳者注:現在はリンク切れ)に記載されているように、V-22はたとえ駐機時でさえ、他機からの吹き降し気流によってV-22の主翼を下に傾けて、エンジンを甲板にたたきつける原因になることがある。そういうわけで、V-22が密集編隊でホバー飛行をするのを見た人はいない。
NATOPSは、急横転の原因となるVRSを回避するため、V-22の飛行間隔を250フィート開けることを求めている。
標準的な海兵隊のヘリコプターでの歩兵輸送任務では、6機のCH46Eが、フットボール場サイズの場所に降りられる。V-22は同じサイズの場所に2機が同時に着陸できるだけだ。

 ここに、強襲上陸を試みるV-22のビデオクリップがある。強烈なV-22のダウンウォッシュがエンジンフィルターを詰まらせないように、彼らは、固い表面の着陸場所(LZ)を選ばなければならない。彼らは、VRSを避けるために、非常にゆっくりと着地しなければならない。このビデオクリップが示すように、彼らが3機着陸しようとしたら、3箇所の着陸場所(LZ)が必要となる。
 http://www.youtube.com/watch?v=n1oekSObO3I
 この動画ではまた、V-22がヘリコプターより速く着陸できるという「神話」を払拭している。

 これら4つの問題と、ティルトローター固有の不安定性や、VRS、悪天候、予期せぬ突風、マイナーなパイロット・エラーなどが結び付けば、操縦制御システムのコンピュータの能力は圧倒されてしまう。
 すでに、上記の要素のより少ない組み合わせでも、一時的に操縦不能となる事態が発生している。一般の航空機では、グアムのB-2事故と同じような低高度であれば、これは問題にはならない。
 しかしV-22では、離着陸しようとしている低高度でそのような事態に遭遇したとき、その高い沈下率と急横転する傾向によって、操縦制御コンピュータが機体を安定させようとするほんの数秒の余裕もなく、横転してしまうだろう。

ティルトロビー
 V-22は、その存在自体、醜悪な技術的常識となっている。
 それは、当初約束された半分以下の搭載量と航続距離しかなく、経費は2倍となった。主要な4軍の開発プログラムすべてに問題があり、コストの増大に苦しめられている。
 しかし、ある効果も生み出している。
 V-22は海兵隊初の大規模な調達プログラムだったが、開発プロジェクトが失敗したとき、将軍たちは何をなすべきか知らなかった。ベルoボーイングは何をすべきかを知っていた。彼らは後でその製品を改修していくことを約束して生産に入る怪しげな方法を手に入れた。
 これらの戦略は、ここで説明されている。
 http://www.d-n-i.net/fcs/comments/c401.htm(訳者注:リンク切れ)
 その要約は以下のとおり:

 「運用テストで問題があることが判明した場合に、技術的な制約から、その解決のために開発方針を変更することや、大規模な再設計を繰り返すことはコストと時間がかかり、既存のいろいろな関係のなかに政治的な抗争や、経済の硬直性をもたらすことになる。
 さらに重要なのは、EMD(生産技術開発)とLRIP(少数初期生産)計画の決定によって、契約者が(1)多数の労働者を雇用し、(2)下請事業者の全国的なネットワークを作り、(3)政治家たちが自身の選挙区で契約や利益が損なわれる恐れをすぐ察知できるよく手入れされた「早期警戒網」を作り、強力な政治的なセーフティネットを構築することを許可したため、キャンセルはほとんど不可能になっていることだ。」

 軍事産業が、彼らの役に立つ将軍たちに不当な報酬を支払うのを許す「合法的な汚職」制度と、失敗を覆い隠すことが賞賛される米軍全体に蔓延するプロらしくない文化によって、破産したV-22の生産は維持されてきた。
 今日もこのような生産ラッシュは続いている。たとえば、新しいF-35戦闘機は、テストをわずか3%完了しただけで、生産が承認された。

 <終わり>