[大阪府の専門家部会提言] 朝鮮学校への介入と民族差別は許されない
橋下大阪府知事は、朝鮮学校を無条件で無償化せよ! 補助金を打ちきるな!


橋下府知事による、カネと権力を使った朝鮮学校差別
 大阪府の補助金を朝鮮学校に支給するか否かを検討してきた、府の専門家部会の提言が、9月22日公表されました。その内容は、カネを武器にして民族教育に介入する、とんでもない内容です。橋下知事は、この提言を受けて、「すべて改善してもらう」などと高圧的な態度で朝鮮学校に屈服を迫っています。
指導者賛美など朝鮮学校の教科書に注文 大阪府部会提言(朝日新聞)
大阪朝鮮高級学校:「指導要領準拠」 大阪府・専門家会議が提言(毎日新聞)
朝鮮学校教科書見直しを…授業料無償化巡り大阪府(読売新聞)

 大阪府は、今春から、国による公立高校無償化に上乗せして、独自に私立高校を無償化する制度を導入しました。しかしながら、橋下知事は、国の高校無償化の対象に朝鮮学校を含めるかどうかが問題になったのに便乗して、「朝鮮総連との関係を絶つなどしなければ、朝鮮学校は無償化しない」と主張し、大阪朝鮮高級学校への無償化適用を留保しています。さらに、小中学校を含む府内の朝鮮学校10校に支給されてきた「振興補助金」(年1億3千万円)までも打ち切ろうとしています。これは紛れもなく、府知事による、カネと権力を使った朝鮮学校への差別です。このようなことを許してはなりません。

民族教育を保障するのは、国と地方自治体の義務
 朝鮮学校に補助金を支給する条件を検討するとして、橋下知事が設置した専門家会議が出したのが、今回の提言です。提言では、「特定の政治指導者に対する敬称をつけるな」、「『現代朝鮮史』を「『教科』ではなく『特別活動』と位置づけよ」、「異なる見解のある歴史的事象については、両論を教えよ」等々、教育内容に公然と介入する姿勢を前面に出しています。
 このようなことは絶対に許されません。なぜならば、民族教育を保障することは、国と地方自治体の義務だからです。民族教育の権利は、日本が批准している子どもの権利条約、人種差別撤廃条約、国際人権規約などの国際条約によって認められています。これらの国際条約と合わせて、憲法第26条1項(教育を受ける権利)、第14条1項(平等権)などにより、日本には朝鮮学校を認め、民族教育を尊重する義務があります。
※例えば、子どもの権利条約第29条では、子どもの教育について「子どもの親、子ども自身の文化的アイデンティティ、言語および価値の尊重、子どもが居住している国および子どもの出身国の国民的価値の尊重、ならびに自己の文明と異なる文明の尊重を発展させること」と規定されています。

朝鮮学校だけを狙い打ちにした、教育への不当な介入
 民族教育を保障するということには、当然、日本の学校と同等の支援を、朝鮮学校に行うことが含まれます。気に入った学校だけに援助し、気に入らない学校には援助しない、などということがあってはなりません。教育内容が日本政府や自治体の見解と異なっても、その変更を要求することなどできません。
 だから、国による高校無償化に朝鮮学校を含めるかを検討してきた文部科学省の専門家会議が、「3年の修業年限を設けている」、「必要な専門的教育を受けた教員が教えている」などの外形的な条件を無償化する基準とし、教育内容を問題にしていないのは、当然のことなのです。
※ただし、文科省専門家会議の報告書にも問題はあり、全面的に支持できるものではありません。
 菅政権は、朝鮮学校をすみやかに無償化せよ!(リブ・イン・ピース☆9+25)

 大阪府も、中華学校やインターナショナルスクールには、無条件で補助金支給を決めています。にもかかわらず、朝鮮学校に対しては、民族教育の保障などお構いなしに、教育内容に介入する姿勢を露わにしているのです。
 また、府の専門家部会は、「財務情報の公開」、「開かれた学校」、「政治的中立性」なども要求しています。こうした要求は、朝鮮学校を閉ざされ隠された不気味な学校として描き、差別をあおるものでしかありません。
 繰り返しになりますが、民族教育を保障するということは、こうした注文も付けてはなりません。学校が開かれていようといまいと、どこかの国と関係があろうとなかろうと、必要な援助はしなければなりません。
 それに、必要な範囲での財務情報は既に公開されているはずです。そうでなければ、各種学校としてすら認可されるはずがありません。朝鮮学校は、地域の人々との交流を既に積極的に行っています。むしろ日本の学校の方が「安全」を理由に閉ざされていっているのではないでしょうか。だいたい、日本の学校への援助にはそんな基準はないのに、なぜ朝鮮学校には要求するのでしょうか。
 「政治的中立性」とは朝鮮総連や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係を切れということでしょうか。日本が民族教育を弾圧し、援助を行わない中で、両者が物心両面で支えてきた歴史があります。本来日本政府や地方自治体がやるべきことを、代わりにしてきたのです。また在日コリアンに「祖国」との関係を断てと要求することは、朝鮮半島に対する日本の植民地支配の歴史、民族弾圧の歴史を全く理解せず、反省しないものです。

橋下知事の狙いは民族差別による朝鮮学校つぶし
 生徒数や寄付金が減って朝鮮学校の運営が苦しくなっている中での補助金廃止は、廃校に追い込むということです。教育内容を言う通りに改めるのでなければ、兵糧攻めによってつぶしてしまおうとすることです。これが、朝鮮学校に通う子どもたちの、教育を受ける権利を侵害するものであることは明白です。教育基本法で禁止された「不当な介入」そのものです。かつて、民族教育への弾圧に抗する「阪神教育闘争」が闘われた大阪で、またも弾圧が繰り返されようとしていることを、座視することはできません。
阪神教育闘争に学ぶ 民族教育と日本(リブ・イン・ピース☆9+25)

 橋下知事は「朝鮮学校への補助金支給には府民の納得が必要」、「公金を入れるなら朝鮮学校を指導する」として介入を正当化しています。朝鮮学校に関係する在日韓国・朝鮮人は府民ではないかのような言い草です。「公金、公金」と言いながら、それが自分で自由に使えるカネのように振る舞っています。「公金」の中には、在日韓国・朝鮮人が払った税金も当然含まれるにもかかわらず。
 これを黙認すれば、同じようなやり方が他の都道府県に波及する危険性もあります。既に東京都や神奈川県で、そうした動きが出ています。ここで食い止めなければなりません。
【主張】朝鮮学校補助金 大阪方式で教育内容問え(産経新聞)

問われているのは日本社会のあり方 抗議の声をあげよう
 こういったやり方が、さして批判もされずまかり通っていることは異常なことです。しつこく繰り返される反北朝鮮キャンペーンによって、「朝鮮」と名の付くものならば何でも忌み嫌うような風潮が広まっているのではないでしょうか。「在特会」などの民族排外主義団体が、「朝鮮人は日本から出ていけ」と公然と叫びながらデモを行っても、朝鮮学校を襲撃しても、「在日の人や朝鮮学校の方に責任がある」と考えて済ませてしまう雰囲気があるのではないでしょうか。
 経済危機と格差拡大の中で、貧困と生活苦に苦しむ人が増えています。そうしたことに対する人々の不満を、ねじ曲げて隣人に向けさせるのは、権力者の常套手段です。「反北朝鮮」、「在日たたき」は、そのための有力な手段となっています。その意味で、朝鮮学校無償化と補助金の問題は、この国における民主主義や基本的人権の質が問われている問題と言えます。
 日本人と在日韓国・朝鮮人の力を合わせて、橋下知事に「朝鮮学校を無条件で無償化せよ!」、「補助金を打ちきるな!」、「民族教育に介入するな!」の声を集中し、朝鮮学校無償化を実現させましょう。

要請先:
 大阪府
  TEL:06-6910-8001 FAX:06-6910-8005
  「府政への意見」

2010年9月28日
リブ・イン・ピース☆9+25