国民投票法改悪法成立糾弾
コロナ禍に紛れた改憲策動をやめよ

 6月11日、改悪国民投票法が、自民、公明、立憲民主、日本維新、国民民主の賛成多数で成立した。コロナ禍で緊急でも何でもない改憲へ動きを一歩進める改悪法を与野党一体となって成立させたことを我々は満身の怒りを持って糾弾する。

政権=改憲派に圧倒的に有利、反対派弾圧のための国民投票法
 成立への道筋をつけたのは、立憲民主党が要求していた政党のCM規制などを自民党が受け入れたからだ。その意味で立憲民主の責任は重大だ。資金力もメディアへの影響力も強い改憲政党と反対野党との格差を是正するための付帯条項で「施行後3年をめどに法制上の措置を講じる」とする。だがこれは圧倒的に改憲派に有利に作られている国民投票法の危険のほんの一部でしかない。潤沢な資金力を持つ民間企業などの有料広告などは野放しである。
 「公務員・教育者の地位利用よる国民投票運動」は、罰則は削除されたが禁止条項は残っている。高校での9条の成り立ちについての授業、大学での憲法についての講義、大学教授のテレビ出演等々を「地位を利用した改憲反対運動」と見なす余地がある。公務員の意見表明が関連業者や市民に対する地位利用と見なされる危険もある。憲法尊重義務を負う公務員・教職員が現行憲法遵守の態度表明が許されない。テレビ・ラジオ等には「虚偽」や「偏向」報道の禁止規定がある。外国人の国民投票運動禁止も残る。そもそも「地位利用」「虚偽」「偏向」が何を意味するのかがあいまいだ。公務員は法的な罰則はなくても懲戒処分の対象にはなりうる。広範な自粛、萎縮がおこる。いつ違反で引っ張られるかわからない。国民投票法は改憲反対派取締法に他ならない。
 さらに最低投票率の規定がない。30%の投票率で過半数、つまり国民の15%程度の賛成でも成立してしまう。

コロナ便乗=「緊急事態条項」抱き合わせ改憲の危険
 菅政権の思惑は、新型コロナ感染拡大に便乗して改悪国民投票法の成立から改憲発動へ進むことだ。菅政権は、あたかも現行憲法が足かせとなって私権制限ができず、感染が拡大しているかのように世論誘導しようとしている。だが安倍・菅政権の失政が、今のコロナ感染拡大と危機を招いたことは明らかだ。経済最優先、GOTOキャンペーン、PCR検査の抑制と感染者放置、医療削減と重症病床の削減、補償なき休業要請、失業者の放置、自治体との責任のなすりつけ合い等々。菅首相は、5月3日右翼団体日本会議系の「美しい日本の憲法をつくる国民の会」等主催の改憲集会に寄せたメッセージで、新型コロナ感染拡大への対応を理由に「緊急事態条項」を「重く大切な課題」として改憲の意図を表明している。同様に下村博文政調会長は“今回のコロナをチャンスに”と露骨に表明した。言語道断である。
 2日の参院憲法審査会では、与野党推薦の参考人から異論が相次いだ。“すでに私権制限を規定する災害対策基本法などがある”“緊急事態条項が必要という合理的な理由はない”“休業要請などで事実上私権が制限されている”“憲法改正権者は国民だ。国民の分断をあおるようなやり方はよくない”“熟議になっていない”等々。
 自民党の改憲の衝動力はあくまで9条改憲、自衛隊・軍隊の合憲化だ。国民投票法は改憲項目を一括で投票する「抱き合わせ発議」を否定していない。菅首相は「9条自衛隊明記」「緊急事態条項創設」「参院選の合区解消」「教育無償化」の「改憲4項目」の実現を表明している。コロナを利用して「緊急事態条項」の必要を宣伝し、国民を煙に巻いて9条改憲を一気に強行する危険がある。

改憲発議のための地ならし=憲法審査会の開催に反対する
 立憲民主党の改定案の思惑は、「施行後3年をめど」とすることで、少なくとも3年間のモラトリアム期間を設け改憲を先延ばしすることにあったとされる。しかし、自民党は、改憲発議と投票法の改定を切り離し、改悪国民投票法成立後ただちに改憲案発議のための準備に入ろうとしている。
 我々は憲法審査会の開催自体に反対だ。一度審議に応じたらあの手この手で改憲シナリオにアリ地獄のように引きずり込まれていく。審査会の開催や議論すること自体が改憲への一歩となってしまう。今回の事態はその危険を何よりも物語っている。立憲民主党は安倍政権のもとでの改憲反対を掲げてきたはずだ。菅政権は安倍政権の改憲路線を引き継ぐと共に、官邸権力の強化と強権支配をいっそう強めている。改憲反対野党は参加を拒否し審査会を休眠させるべきだ。
 我々は、衆参憲法審査会を開催しないこと、一切の改憲案議論、改憲発議の動きをやめ、新型コロナ対策に集中することを要求する。

2021年6月12日
リブ・イン・ピース☆9+25