ベネズエラ国民議会選挙の成功を祝う
与党圧勝 ボリバル革命の前進を歓迎する
米欧帝国主義は制裁・封鎖を解除せよ

 12月6日に行われたベネズエラの国民議会選挙は、平穏かつ正常に終了し、マドゥーロ政権与党が圧勝した。社会主義統一党(PSUV)を中心とする与党同盟「大祖国極」(GPP)は有効投票の68・48%の圧倒的多数を獲得した(98・63%開票段階)。その結果議席数では全277議席中253議席を占めることになった。一方主要野党の二つのグループ民主同盟(AD)とベネズエラ・ユナイテッド(VU)はそれぞれ17・5%、4・2%にとどまった。今回与党同盟GPPから離脱した、ベネズエラ共産党(PCV)を中心とする人民革命オルタナティブ(APR)は2・7%の得票にとどまった。
 私たちはマドゥーロ政権とベネズエラ人民の新たな偉業、ボリバル革命の前進を心から歓迎する。
 ベネズエラの国民議会選挙に対する日本のメディアの報道はデマと悪意に満ちた一方的なものだった。それはトランプと米帝国主義の宣伝を口移しで繰り返すものだった。「独裁国家」の「不正選挙」。しかし、何の客観的証拠もなく、事実を丹念に検証した跡もない。トランプばりのフェイクニュースを厚顔無恥にばらまいただけだった。私たちは今回のベネズエラ国民議会選挙の実際の姿、それが持つ国内的、国際的意義を明らかにすることで、腐りきった宣伝機関に成り下がったメディアを徹底的に批判したいと思う。

 
12月12日 カラカスの祝賀デモ
(PSUVのtwitterより)


選挙結果を発表する中央選挙評議会(CNE)
(CNEのtwitterより)


選挙後のマドゥーロ大統領
(自身のtwitterより)

米介入の道具を人民と革命の側に取りもどす
 今回の選挙の第1の意義は、前回の選挙(2015年)で反革命勢力が多数を占めた国民議会を奪い返し正常化したことだ。野党多数の議会は、反革命極右強硬派が支配権を握り、政府にことごとく反対して様々な国家機能をマヒさせてきた。2018年の大統領選挙を否定し、昨年1月以降、トランプの命でグアイド国会議長が自称「暫定大統領」を名乗り、米国の手先として政府転覆を追求してきた。米国の介入を要求して混乱を引き起こし、クーデターを起こし、米の経済封鎖を支持し、軍事介入を求めるなど異常な行動を繰り返してきた。米の介入の道具となり果てていた国民議会を、正規の公正な選挙によって人民全体のものに取り戻したのだ。米の操り人形=グアイドは国会議員の資格を失った。米国はもはや「国会とグアイド暫定大統領」を支持して、正当な代表でないとしてマドゥーロ政権と対決するという口実さえ使うことができなくなった。
 第2の意義は、帝国主義の介入・干渉を排したこと、反革命極右強硬派とそれ以外の穏健派野党を分離し、穏健派野党を対話と協調の道に引き戻したことだ。ここ数年さまざまな反革命策動に失敗してきた米帝国主義と極右勢力はボイコット戦術をとった。理由はただ一つ、ベネズエラ人民の支持を失い、勝てる展望がなかったからだ。米は、選挙に参加するという穏健派野党政治家たちまで制裁対象に加え、選挙に参加するなと恫喝した。反政府野党内部では、次第に米国の封鎖に対する批判が広がり、グアイドら反革命極右強硬派が孤立し始めた。マドゥーロ政権は、穏健野党との対話を追求し、多くの野党勢力が選挙に参加するように呼びかけ、実現した。選挙にはグアイドら極右強硬派を除く多くの野党が参加した(全部で107党、うち与党同盟は9政党)。外国の介入と干渉によってではなく、国内の与党と野党が対立しながらも、選挙と対話を通じて、あくまでもベネズエラ人民が針路を決める道が開かれた。
 第3の意義は、米帝国主義の干渉と介入に抵抗し、新自由主義的な攻撃と支配に反対するラ米カリブの人民を勇気づけたことだ。この地域の社会主義指向革命の先頭を行くベネズエラのボリバル革命過程の前進は、ラ米カリブと国際的な反米・反帝勢力の力関係を有利に展開するだろう。

低投票率の根本原因は米欧の経済制裁・封鎖
 今回の選挙を、欧米や日本の帝国主義メディアは、どのように報じたか。一つは低投票率。もう一つは「不正選挙」だ。いずれもデタラメだ。
 確かに投票率は30・5%とかなり低かった。しかし、問題はその根本原因は何か、である。結論を言えば、それは経済危機と労働者・人民の生活の極度の悪化にある。しかしその悪化の最大の原因は、米と西側帝国主義によるベネズエラの国家財産の略奪と経済制裁・封鎖である。石油輸出で生きてきた国から、トランプがその米国の拠点石油企業を勝手に強奪し、その企業と輸出代金を反革命傀儡のグアイドにくれてやり、稼いだ石油収入の銀行預金と金塊を米英や西側帝国主義が差し押さえた。ドル預金が封鎖されたら、一切の貿易が途絶する。ベネズエラ経済を回す根幹の一切を略奪したのである。植民地時代ならいざ知らず、現代にこのような海賊行為が公然とまかり通ること自体が異常だ。西側メディアは、この事実を一切批判しない。
 こんな状況で、なおかつマドゥーロ政権が西側帝国主義と対決していることが奇跡である。兵糧攻めに遭っても屈服しない。今回の選挙結果、投票率約3割で与党が約7割を獲得した、つまり21%の革命的中核が、選挙には行かなかったが消極的にチャベス以来のボリバル革命を支持する人民をリードしながら、反米・反帝の革命的意志を誇示したのである。これが今回の選挙結果の本質である。

帝国主義メディアの横暴とデマゴギー
 西側帝国主義諸国とそのメディアは、自分たちが課した経済制裁・封鎖という根本原因、植民地主義的海賊行為を伏せたまま、投票率の低さを取り上げ、選挙の不当性を世界中に喧伝した。日本のメディアもそうだ。「疑惑の国会議員選 マドゥーロ政権独裁強化狙う」(朝日)、「独裁政権が正当性主張」(日経)、「国会議員選『完全な不正』」(毎日)等々。恥ずべきことに、日本共産党もこれに同調する。「人権抑圧で国際的にも批判されているマドゥロ政権は過半数を奪還する見通しですが、投票率は約3割にとどまりました」と。そして後述するトランプとグアイドの国民投票戦術に期待する(12/8赤旗)。
 だが、前述の如く、低投票率の原因は西側帝国主義の経済制裁・封鎖だ。グアイド側のボイコットの影響は一定あるが、本質的なものではない。多数のベネズエラ人民は、長期にわたるトランプ政権の経済制裁・封鎖によって、完全に疲弊しきっていたのである。ガソリン不足で何時間も行列し、生活物資の不足に苦しみ、生産のための資材や物資の不足に途方に暮れる生活を押しつけられているのである。これにコロナショックが付け加わる。コロナによる医療体制の弱体化(これも封鎖による医療物資や設備の激減が原因だ)、コロナ恐慌の下での経済活動の自粛、失業や倒産・廃業、外出制限、等々。

「不正選挙」のデマ
 もう一つの「不正選挙」論はどうか。トランプはベネズエラ国民議会選挙の前から「不正」と決めつけ、選挙そのものを認めない傲慢な態度を取った。選挙後にポンペオ国務長官は「茶番」と呼んで、結果を認めなかった。EUもベネズエラから選挙監視団の派遣を依頼されていたが、拒否して選挙延期を要求した。それが受け入れられないと選挙を不正呼ばわりし始め、野党への離脱工作を強めた。しかし、今回の選挙には「不正」は一切ない。マドゥーロ政権は、夏には100人もの野党政治家らに対して恩赦を行った。対話と協力で、共にベネズエラの未来を創る議会を作ろうと呼びかけた。もちろんグアイドらにも参加を呼びかけた。彼は、米の指示で自分からボイコットしたに過ぎない。選挙そのものについては、国連とラ米・カリブ地域の国際諸組織やアフリカ連合などを含む34カ国からの約300人の代表者と1,500人の監視人によってこの選挙は監視され、正当で合法的な選挙であったことが確認されている。もし、不正があると言うなら、その証拠を示すべきであろう。というより、そもそも「不正選挙」を叫ぶのが、自国の大統領選挙で根拠のない「不正選挙」を騒ぎ立てるトランプだということを、西側メディアはどう申し開きを立てるのか。

制裁・封鎖と経済危機の打開をめぐる革命派内の分岐
 今回の選挙をめぐって、勢力とすれば少数だが、革命派内に重大な分岐が生じた。ベネズエラ共産党(PCV)、「皆のための祖国」党(PPT)やトロツキスト諸派が、与党PSUVとの協力関係を解消し、独自の選挙連合「人民革命オールターナティブ」(APR)を立ち上げたのだ。それは、米帝国主義による制裁・封鎖の強化の下で苦境が深刻化しているときに、革命勢力を分裂させ、米帝を利する危険があった。だが、APRの得票は2・7%で人民の多くは支持しなかった。
 確かに、経済制裁・封鎖下の人民生活の困窮に耐えかねた人民が散発的に抗議行動を起こしている。それは正当なことだ。PSUVの一部がこれを弾圧するのは許し難い。PCVが彼ら人民と共に行動するのも当然である。しかし、左翼・共産主義勢力がそれ以上に今なすべきことは、経済制裁・封鎖に対抗する具体的方策を提起することである。
 結局は、経済制裁・封鎖を根本原因と捉えるのか否か、反米・反帝を徹底的に前面に押し出すのか否かだ。前述の如く、ベネズエラ経済の根幹を米と西側帝国主義は解体し、略奪したのである。従って、石油生産をはじめ重要産業や食料や生活必需品の生産活動そのものを正常化する必要がある。しかし、その財源や資金が帝国主義に奪われているのだ。中国やロシアやイランなど、米や西側帝国主義の制裁・封鎖に抗う有効諸国から外資を導入するしかないし、ガソリン・物資不足を打破し、生産復興のための資材・技術を導入するしかないのである。その切り札が、マドゥーロ政権が選挙前に制定した「反封鎖法」である。APRが革命派から離脱したのは、直接的にはこの「反封鎖法」に反対したからである。文字通り、封鎖に対峙する友好諸国外国企業との資本連携・協力、そして国内の民族中小資本との協力関係強化なのである。一部に国営企業の一定の民営化も含まれているが、石油産業など基幹産業の根幹は国有企業のままである。
 PCVやPPTは一切の民営化や外資導入に反対し、社会主義方策で苦境を乗り切るべきだと主張する。生産力を奪われ、財源や資金を奪われた国で、原資も財源もなしに、社会主義ウクラードの強化や国有化で乗り切れると考えること自体、現実から乖離しているのではないか。マドゥーロ政権の「反封鎖法」は、いわば余儀なくされ強いられた「戦略的退却」の側面が大きい。「革命への裏切り」とまで言い切れるのか。革命派の団結の回復を期待したい。

グアイドと反革命極右強硬派の凋落
 グアイドは完全に凋落した。昨年1月以降の様々な政府転覆の試みがことごとく失敗し、反政府派の中で求心力を失った。反政府派をまとめられず、米の言うまま選挙ボイコットに進んだが、孤立を深めただけだ。動揺的な立場で今回も途中からEUの顔色を見て選挙から離脱したエンリコ・カプリレス(元大統領候補で州知事)からさえ「グアイドは終わった」と評されるほどだ。グアイドは議会選挙に対置して12月8日から12日までオンラインと対面での「国民投票」を呼びかけた。彼らは選挙を否認しマドゥーロ打倒の「国民投票」で646万人(選挙の投票数より多い!)の参加を得たと虚勢を張った。しかし、「国民投票」は何らの根拠も持っていなかった。しかもオンラインの投票は何度でもでき、選挙人名簿もなく、公正さは何も担保されていないお粗末なものだった。挙げ句の果てに「(政府に知られないように)名簿、資料等は即刻焼却する」と言い訳をした。結局、米欧のメディアも取り上げたが「野党からも疑問が出されている」と書かれ、グアイドの凋落ぶりを確認するだけになった。

米と西側帝国主義は制裁・封鎖を解除せよ
 国民議会は正常化された。しかし、選挙にEUを関与させて国民議会を認知させ、制裁・封鎖を緩和させるという当初の思惑は外れた。米帝の制裁・封鎖を解除させ、ベネズエラが自分の針路を取り戻すという任務はこれからだ。マドゥーロ大統領は選挙後いつでも話し合う用意があるとバイデン次期大統領に向けて働きかけた。米もEUも今のところマドゥーロ政権を認めない、制裁・封鎖を解除しない姿勢を続けている。マドゥーロ政権は、一方で友好国からの外資導入で持久戦の体制をとり、他方でバイデンの変化、EUの変化を追求する。
 社会主義指向のボリバル革命を推進し続け、米帝・西側帝国主義と真正面から闘うマドゥーロ政権ベネズエラ人民に連帯しよう。


中央選挙評議会(CNE)発表選挙結果

  有効投票数6,251,080票 投票率30.5% 開票率98.63%

与党「大祖国極(GPP)」  4,277,926票  68.43%
野党「民主同盟(AD)」  1,095,170票  17.52%
 野党「ベネズエラ・ユナイテッド(VU)」 259,450票  4.15% 
 「人民革命オールターナティブ(APR)」 169,743票   2.7%
 その他 405,017票   6.48%





2020年12月31日
リブ・イン・ピース☆9+25