[報告]京丹後Xバンドレーダーサイト・フィールドワーク

1. フィールドワークの概要
 2026年9月26日(土)、米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会の呼びかけで、京丹後Xバンドレーダーサイトを訪ねるフィールドワークが行われた。京都市内から現地までは約120キロ、マイクロバスで片道およそ3時間。京都・大阪に加え、福岡、埼玉、神奈川からも参加者が集まり、約20人が行動を共にした。
現地では、日々基地を監視している京丹後市議会議員の永井友昭さんの案内で、Xバンドレーダーサイトの周囲を一周した。国道を挟んですぐ近くに住民の暮らしがある。その距離感を確かめながら基地の現状について説明を受け、その後、地元の人たちとの対話と交流の時間を持った。


2. 基地の役割と住民生活への影響
米軍経ヶ岬通信所の概要
 経ヶ岬通信所には、弾道ミサイルを探知・追尾するXバンドレーダーが配備され、2014年12月から稼働している。建設は、1期工事(2014年5月〜2015年1月)と2期工事(2018年4月〜2021年5月)の二段階で進められた。
レーダーは「1000キロ先の野球ボールの動きも捉える」とされるほど高い探知能力を持ち、24時間体制で弾道ミサイルを監視する。軍事作戦の「探知・追尾」を担う重要拠点であり、現在はAI分析や宇宙からの情報とも結びつき、収集したデータが日米の指揮・統制(C2)システムを通じて瞬時に共有される。経ヶ岬通信所は、地域に広がる日米の軍事ネットワークの一部として機能している。

攻撃目標とされる危険
 2026年2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して以降、イランは報復として中東各地の米軍レーダー施設を攻撃した。少なくとも10か所の米軍レーダーサイトが無人機やミサイルによる攻撃を受け、なかでもXバンドレーダー(AN/TPY-2)への攻撃は、米軍のミサイル防衛網に深刻な打撃を与えたと報じられている。
経ヶ岬通信所は、国道を挟んですぐそばに住民の暮らしがある。ひとたび戦争になれば、このレーダーが優先的な攻撃目標となり、周辺地域が直接危険にさらされかねない。

高まる警戒レベル
 米国とイスラエルによるイラン攻撃後、経ヶ岬通信所を含む米軍施設では警戒が強まった。米軍は中東だけでなく、太平洋地域を含む世界各地の基地で警戒レベルを引き上げ、グアムや北マリアナ諸島ではFPCONを「アルファ」から「ブラボー」へ変更した。車両の抜き打ち検査や入退場手続きの変更なども実施されている。
FPCONはテロの脅威に応じた5段階の警戒態勢で、「ブラボー」は「アルファ」より一段高く、脅威が増大し、より予測可能になった状態を示す。現在、日本国内の米軍基地も「ブラボー」に引き上げられている。これを受け、警察庁は2026年3月、米軍基地や米国・イスラエル関連施設の警戒と警備を強化するよう、全国の都道府県警に緊急指示を出した。

突然、姿を消したレーダー
 2026年7月4日、いつも建屋前にあるはずの移動式Xバンドレーダーが姿を消していることを、日々監視を続ける永井さんが確認した。その後、レーダーは元の場所に戻ったが、こうした移動は「極めて異例」とされ、米軍から地元自治体への事前連絡はなかった。京丹後市も住民からの通報で初めて事態を把握し、対応は後手に回った。
 住民からは、日本海の潮風や波しぶきによるメンテナンスの可能性を指摘する声がある一方、中東情勢との関連を疑う声も上がった。

進むレーダーの更新と新型開発
 2026年2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃後、イランの反撃でAN/TPY-2を含む12基のレーダーが破壊された。これを受け、米ミサイル防衛局(MDA)はAN/TPY-2の後継システム開発に着手し、数分で撤収できる高い機動性を求めている。
既存のAN/TPY-2でも、2016年以降、窒化ガリウム半導体への換装やソフトウェア更新による性能向上が進められている。2025年5月には、米軍が初のアップグレード型を受領した。イランでの損失は、こうした改修と新型開発をさらに加速させる要因になったと考えられる。ただし、経ヶ岬通信所のレーダーが具体的にどのような更新対象となっているかは確認できていない。

夜まで続く発電機の騒音
 2018年の商用電力導入時、米軍は「発電機の使用は緊急時に限る」と約束した。しかし2026年に入ると、昼夜を問わない連続稼働が相次ぎ、8月5日時点で稼働日は計106日に達した。住民からは「夜も眠れない」と切実な声が上がり、緊急用だったはずの発電機が日常的に使われる状況への不安が広がっている。
市長は防衛省に緊急の申し入れを行った。防衛省は事態を「重く受け止める」とし、専門家を交えて対策を検討する方針を示した。

敷地を越えていたフェンス
 2026年4月の毎日新聞の報道で、基地東側の日本海側フェンスが敷地境界を越え、京丹後市が管理する里道約4平方メートルを囲い込んでいたことが明らかになった。米軍は同年3月に越境を認めたものの、原因は特定できていない。
 市長は、「なぜ、たびたび起きるのか」「昨年1月に判明したのに、市への報告がなかったのはなぜか」と追及し、文書での説明を求めた。

基地周辺に積み重なる問題
 このほかにも、日米共同訓練の強化、旧宇川中学校の軍事利用、銃を携行した米兵の基地外国道での移動、事前連絡のない実動訓練などが問題となっている。基地周辺海域での水質基準値超過、米軍関係者による交通事故、ドクターヘリ運航時にレーダーが停止されなかった事例、米軍属の集団通勤・集団居住が実現していないことなど、住民の安全と暮らしに関わる課題は多岐にわたる。

「特別注視区域」指定への不安
 重要土地等調査法は、防衛関係施設など重要施設の周囲おおむね1000メートルを注視区域・特別注視区域に指定し、土地や建物の利用状況を調査し、機能阻害行為がある場合に勧告・命令を行う仕組みである。特別注視区域では、一定面積以上の土地・建物の売買などについて契約当事者に事前届出が求められる。経ヶ岬通信所周辺が「特別注視区域」に指定されたことは、住民にとって、土地取引や地域の将来設計に国の監視・届出義務が重なるという新たな不安を生んでいる。基地の存在によって生活環境への負担が増すだけでなく、土地利用そのものまで安全保障の名で管理されるのではないかという懸念が示された。

ドローン規制が地域にもたらす影響
 小型無人機等飛行禁止法は、指定された自衛隊施設・在日米軍施設などの敷地・区域と、その周囲おおむね1000メートルの上空で、小型無人機等の飛行を原則禁止している。在日米軍施設・区域の周辺で飛行する場合は、施設管理者の同意を得る手続が必要とされ、防衛省は米軍施設では原則30日前までの申請を求めている。これは、基地周辺での空撮、測量、災害時の確認、農作業や地域記録のための撮影にも影響しうる。住民の側から見ると、基地の安全確保を理由に、上空の利用や記録活動まで制限されることになり、地域の実態を自ら把握し発信する手段が狭められる懸念がある。


3. 地域社会・交付金をめぐる論点
再編交付金が地域にもたらしたもの
 京丹後市は基地の受け入れに伴い、2014年度から5年間で約32億円の再編交付金を受けた。これは、市の年間市税収入約49億円に迫る規模である。交付金は、市民総合検診、成人用肺炎球菌予防接種、宇川診療所の運営、道路改修などに使われ、一部は「再編交付金事業基金」として積み立てられた。過疎と高齢化が進む地域にとって、その財政的な影響は大きい。
 一方、再編交付金は原則10年の時限的な制度で、恒久財源ではない。高齢化率が40%を超える経ヶ岬地区では、交付金への構造的な依存を避け、一時的な財源に頼らない地域づくりが重要だと指摘されている。
 再編交付金は、過疎地域に短期間でまとまった財源をもたらす「アメ」として機能した。しかし、交付期間が限られ、算定根拠も見えにくい。地域の自立を長期的に支える仕組みにはなりにくいという限界がある。

宇川小学校の閉校
 2026年3月24日、宇川小学校で閉校式が行われ、4月から丹後小学校へ統合された。1975年のピーク時には296人いた児童は、閉校時には24人にまで減少。宇川地区の人口も、2004年の約2000人からほぼ半減した。学校は学びの場であるだけでなく、地域の人々がつながる拠り所でもあった。その場を失う寂しさが、交流の中で語られた。

対話の場と、残る情報共有の壁
 経ヶ岬通信所では、「安全・安心対策連絡会」が定期的に開かれている。国の近畿中部防衛局、米軍の第14ミサイル防衛中隊長、京都府と京丹後市、警察、区長会や防犯委員会、交通安全指導員会などの地域代表が一堂に会する。米軍司令官が直接参加し、住民側が声を届けられる公式の場であることは大きな特徴だ。
しかし、その実効性は、情報が速やかに共有され、説明責任が果たされるかどうかに左右される。実際には、日米共同訓練が事前連絡なしで行われたり、発電機稼働の連絡が遅れたりする例が繰り返されてきた。「業務実施要領の具体化や周知が不十分だった」「人事異動が重なった」と説明されているが、地域の不安に直結する問題である。自治体からは「遺憾」「信頼を著しく低下させる」と厳しい指摘が出ている。

SNS閉鎖と事前連絡なし訓練の発覚
 米陸軍第14ミサイル防衛中隊の部隊レベルSNSは、米陸軍の方針により2026年2月に閉鎖され、以後は第38防空砲兵旅団など上位部隊の公式アカウントへ情報発信が集約されると案内された。このSNSは、それ以前には経ヶ岬通信所での部隊活動や自衛隊との交流の様子を発信しており、地元が基地の動きを知る数少ない手がかりの一つでもあった。
 2025年7月9日・10日には、米陸軍経ヶ岬通信所と陸上自衛隊第7普通科連隊による日米共同基地警備訓練が行われたが、京丹後市や京都府、地元住民への事前の情報提供はなかった。近畿中部防衛局の説明では、中部方面総監部から防衛局への情報共有が行われず、業務実施要領の具体化・周知不足や人事異動が原因とされた。しかし、住民自治体や防衛局に説明されないまま訓練が実施され、その事実が米軍ミサイル防衛中隊のSNS発信を通じて把握されたことは、情報共有の仕組みそのものへの不信を深めた。京都府は、防衛省に対する信頼を著しく低下させ、地域住民に不安を与えるものとして抗議している。

4. 市民団体の動き・今後の予定
  2026年9月17日、市民団体は京丹後市長に申し入れ書を提出した。求めたのは、発電機の夜間稼働中止、基地受け入れの撤回、旧宇川中学校の軍事利用中止、事故情報の公開、水質調査の改善、土地利用規制法の慎重な運用、日米地位協定の抜本改正などである。

12月13日に丹後文化会館で恒例の「米軍基地いらんちゃフェスタ2026」が開かれる。布施祐仁さんが「米軍Xバンドレーダー基地の役割とその危険性(仮題)」をテーマに講演する予定である。 

 キーン・ソード27と基地周辺地域での訓練
 10月19日から始まる令和8年度日米共同統合演習「Keen Sword 27」は、10月29日まで実施され、実施場所には自衛隊施設、在日米軍施設・区域、民間空港・港湾に加え、「我が国の公有地及び民有地等」も含まれている。訓練項目には統合防空ミサイル防衛訓練、陸上作戦訓練、機動分散運用訓練、重要施設等防護訓練などが掲げられ、自衛隊からは約4万5000人、車両約6100両が参加するとされる。この大規模演習の中で、経ヶ岬周辺でも日米共同訓練が行われ、伊丹に司令部を置く陸上自衛隊第3師団の部隊が展開することは、基地問題が敷地内にとどまらず、地域全体へ広がっていることを示している。
 問題となるのは、訓練が基地の中だけで完結しない点である。自衛隊の戦闘車両が公道を走行し、基地外にある旧小学校跡地や灯台周辺も訓練地として使われる。住民の日常生活の場、地域の共有空間、観光や漁業・生活道路と重なる場所が、軍事訓練の場へ組み込まれることになる。これは、基地の存在が「点」ではなく、道路、学校跡地、海岸、灯台といった地域の空間全体を軍事利用へ巻き込んでいく問題であり、住民への事前説明、交通安全、生活への影響、地域自治の観点から看過できない。

5. まとめ
過疎の中で続く、粘り強い運動
 交流会には、地元で粘り強く活動を続ける「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」と「米軍基地反対丹後連絡会」のメンバーも参加した。
「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」の増田さんは、毎月現地を訪れる京都連絡会の活動に感謝を述べたうえで、運動を続ける難しさを率直に語った。日常生活の中では基地の危険を実感しにくく、戦争体験を次の世代へ伝えることも容易ではない。そのため、住民が反対の声を上げ、行動に移すまでには高い壁がある。
 それでも、老人会などで「基地のことを頑張ってください」とそっと声をかける人がいる。表立って行動には加わらなくても、地域には活動を静かに支える人々がいることが伝わってきた。

現地で見えたもの
 今回のフィールドワークで明らかになったのは、Xバンドレーダー基地が、遠い安全保障の問題ではなく、住民の日々の暮らしと隣り合わせにあるという現実だった。発電機の騒音、敷地を越えたフェンス、事前連絡のない訓練、学校跡地の軍事利用など、問題は一つではない。
 米軍や防衛省の説明不足、約束と実態の食い違い、後手に回る情報共有が繰り返される一方で、住民、市民団体、自治体は粘り強く改善を求め続けている。基地の存在を前提とした地域振興ではなく、住民が主体となる平和で持続可能な地域をどう築くのか。その問いを、現地の風景と人々の声が改めて突きつけていた。

2026年10月3日 リブ・イン・ピース☆9+25 NOW