[報告]4月18日(日)リブインピース@カフェ「ウチナーンチュとともに反基地を語る」
「本土」は、沖縄の怒りの声を自分の問題として真剣に受け止めるべき

 4月18日(日)午後、大阪市立市民交流センターなにわで、リブインピース@カフェ「ウチナーンチュとともに反基地を語る」を行いました。26人が参加しました。お話をしていただいたのは沖縄出身の24歳の女性、金城有紀さんです。一度@カフェに来られた時に基地問題について沖縄人の立場からの見方を語られました。私たちとしては厳しく感じながらも、「本土」の運動の一面性や無意識の差別・傲慢さを持っていると気づき、是非一度お話をしてほしいと依頼し、実現しました。
※以前、金城さんが来られたときの@カフェの報告
[緊急報告会]沖縄県民大会の参加報告と普天間問題 @カフェ報告(リブ・イン・ピース☆9+25)

 カフェの後半では、西大門刑務所歴史館、ナヌムの家、水曜デモ、非武装地帯(DMZ)など、韓国ツアーに行った報告がありました(このツアーの詳しい報告は別途行います)。

二つの「神話」を批判
 まず金城さんは、「普天間がなくなると中国が攻めてくる」、「沖縄経済が破綻する」という二つの宣伝を批判しました。
 沖縄には普天間基地の4倍もある嘉手納基地があります。普天間基地は日本にある米軍基地のわずか4%分に過ぎません。普天間基地が返還されたとしても、沖縄には日本にある米軍基地のおよそ70%が集中して存在し続けます。普天間が閉鎖されただけで日米同盟は壊れないし、アメリカ側も普天間基地を危険な基地として、閉鎖したがっており、また最近の米中関係の良好な関係、日本と中国の経済的な関係から言っても、中国が攻めてくることはあり得ないと語りました。
 「基地経済」についても、たとえば北谷の新都心では、基地返還により、税収が80倍、経済波及効果が81倍、雇用が100倍になりました。そもそも、基地がそれほど経済に役立つというなら、基地が集中している沖縄の失業率があんなに高いのはおかしいと語りました。基地があって、経済が潤うならば、日本で一番米軍基地のある沖縄が、日本で一番の金持ちの県でないとおかしい。米軍基地が存在する街で、発展しているところがどこかあるのか。佐世保、岩国、横須賀などを見てもそこまで経済的に豊かな印象は持ちません。基地があるよりもないほうが地域経済の活性化につながっていることは、北谷や新都心を見てもあきらかだ、と指摘しました。

95年の少女暴行事件は氷山の一角
 いよいよ本題に入ります。沖縄の運動が95年の少女暴行事件を機に盛り上がったかのように言われていますが、女性がからむ事件は膨大にあります。金城さんは、戦後直後から2000年頃までのおびただしい数の、女性が被害者になった事件を紹介しました。本土のマスコミは少女暴行事件をことさら大きく取り上げますが、氷山の一角です。このような点だけでも沖縄の実情が本土には正しく伝わっていないといいます。最近は凶悪犯罪は減っていますが、それでも、2日に1回くらいの頻度で米兵関連の事件が起こる時もあり、外出の自粛などで基地外での事件は減っているが、基地内での事件が増えているという事情もあるといいます。また、イラク戦争やアフガニスタン戦争など実際に戦争が起こると米兵のストレスも増え、事件が増加するというのが基本的傾向だと指摘しました。

「本土」の運動や意識に対して感じる違和感
 金城さんは「本土」の運動や意識に対して違和感を感じていることを率直に語りました。それは以下のような点です。
・「沖縄問題」と言われるが、「沖縄」の問題ではない。「基地問題」、「安保問題」は沖縄県だけの問題ではなく、「日本」と「米国」の問題であるはずだ。なのに長年、沖縄の問題であるかのようにいわれ続けている。本土に住む人の問題でもあるはずで、日本国民一人ひとりの問題だ。「本土」にはここの認識が弱い。
・たとえば本土で「沖縄に連帯する」と言われるが、「連帯してあげている」という感じで、あくまで沖縄の運動が主体という印象を受ける。自分たちの問題という感じが伝わってこない。
・また「沖縄の運動、がんばってください」と言われる。沖縄はずっとがんばっている。「あなた自身が頑張ってください」と言いたくなる。「私たちは何をしたらいいでしょうか」と聞かれることもある。「自分で考えてください」といいたい。
・「沖縄の平和を守ろう」というスローガンが掲げられる。しかし、沖縄に守る平和はない。「戦後65年間戦争がなかった」というような言い方もされるが、朝鮮戦争、ベトナム戦争もあった。当時沖縄は米の占領下にあり、沖縄の基地は出撃拠点となった。最近のイラク戦争でも、沖縄は「悪魔の島」と呼ばれている。沖縄から、戦闘機がイラクに向かったからだ。アメリカの戦争に、沖縄は(日本は)常に関わっている。その事実を本土の人が知らないだけだ。また、沖縄では米軍関係の事故も多く起きている。沖縄に守る平和はまだ存在しないように思う。
・ある時、東京、韓国、沖縄の高校生がテレビ電話でつないで討論をした。テーマは「慰安婦問題」や「教科書問題」で、韓国と沖縄の高校生は共感し合い通じあったが、東京の高校生は、話している意味が分かっていない感じだった。しかも東京の高校生は「慰安婦」問題の存在そのものを否定していた。こんなところでも大きな意識の差がでてくる。

沖縄から大阪に出て、再び沖縄へ
 金城さんは住んでいる地域に米軍基地がないことから「反米」というより「反日」の意識が強かったといいます。周りから、過去の戦争での話を聞くことが多く、自分のことを「日本人」ではなく「琉球人」と思っているそうです。ところが、高校時代、「本土」出身の先生の影響で、沖縄のことを学び直し、本土に行ってみたいと思うようになって大阪に出てきました。そして在日の問題やアジアの問題などにかかわっているうちに、絶えず沖縄のことが頭をよぎるようになり、自分は何をしようとしているのかと自問し、やはり沖縄の問題に関わるべきではないかと思うようになりました。そして沖縄に戻り、辺野古の座り込み闘争などに参加するようになったのです。
 2004年8月13日、友人に誘われて沖縄国際大学の近くのカフェへ車で向かっていたときに米軍ヘリ墜落事件が起きます。友人から「沖国大にヘリが墜落した」という連絡を受けて冗談だと思っていたが、沖国大に近づくにつれて、渋滞がひどくなり、カフェに行くことができなかったそうです。そして沖国大の方向から黒煙が上がっているのをみて、さっきの電話は本当なんだな。と実感し、家に帰ってテレビを見て、事の重大さに改めて気がついたそうです。少しでもヘリ墜落の場所がズレていたら死んでいたかもしれない。と基地の危険性を感じ、基地があることへの危機感を持ったのが反基地の運動に参加するようになったきっかけだと言います。
 そんな金城さんでも、基地のない糸満市出身のため、生まれたときから米軍基地の脅威にさらされている中北部の人たちに比べて意識が違うところがあると言います。それを分かった上で活動をしていると語りました。

沖縄国際大学へのヘリ墜落事故で伊波市長がとった毅然とした態度
 金城さんは、基地撤去のために闘い続けている伊波宜野湾市長に敬意を持っています。特に、沖縄国際大学での米軍ヘリ墜落に際して伊波市長が取った対応がきわめて重要です。市長が現場に駆けつけて中に入ろうとし、封鎖しようとしていた海兵隊員と押し問答になった。日本の領土で、大学という日本の施設で起こった重大事故で、日本の警察も政治家も入ることが出来ない、沖縄に日本の主権が存在するのかどうかという実態をまざまざと見せつけられることになりました。外務省の役人や政治家などが来て現場検証したいと言いましたが、海兵隊に拒まれ、スゴスゴと帰って行きました。小泉首相などは「夏休み」といって、来ることさえしませんでした。ところが伊波市長だけはアメリカ側と正面から対峙して、事故現場に入ってしまいました。
 日本の領土で起きた事故で、日本の政府や宜野湾市長、県警が事故現場に入れないことがおかしいのです。それをきちんとアメリカ側に示し、行動に移した伊波市長だけが日本において、米国側ときちんと話のできる人だと思いました。あの時、沖国大に入れたのは伊波市長と、一緒に来ていた副知事だけだそうです。こんなところにも、伊波市長と日本政府の政治家との違い、つまり沖縄と本土の感覚の大きなズレが現れています。

沖縄の人の言葉を真剣に受け止める必要
 金城さんは、「本土」の運動の一面性や違和感を指摘するとき何度も「こんなことを言うと袋だたきに遭うかも知れないが」と前置きしました。実際、さまざまな反基地の会合や集会などに出席して発言すると、「せっかく沖縄と連帯しようとしているのに」「沖縄の人は本土の人間を拒否する」などという対応をされることがよくあるそうです。そのような対応の中に、本土の運動の弱点があるのではないかと思います。
 沖縄の人たちの声に真剣に耳を傾け、その思い、意識にできるだけ近づき、本土の運動の弱点を知り、学んでいくことが重要だと思います。 私たちは今回の企画を、基地問題を「本土」の自分たちの問題としてとらえ大阪での活動を進めていく一歩にしたいと思います。
(カフェのあと、辺野古と高江にむけて寄せ書きをし、4月25日の沖縄県民大会に代表が持って行くことになりました。)

辺野古への寄せ書き

高江への寄せ書き

参加された方のアンケート

□50代 女性
 高校生の時代に、韓国と沖縄の方が東京の高校生より共感できた(被害者としてのシンパシー)という話が印象に残りました。

□40代 女性
 基地の問題についても、どこか沖縄の問題と考えてた気がします。ウチナーンチュの方の思い、反日とか、現実に起こってる米軍の犯罪について知ることが出来ました。
今日はお話ありがとうございました。
・韓国ツアーのお話も観光ではあまり行かない所を紹介してくれてありがとうございます。

□60代 女性
 普天間基地撤去を要求することは、日本の問題、日米問題であることをリアルに感じることができました。
 24歳という若い女性の話であったこと、そのこと自体がうれしかったです。

□40代 女性
 この集いが始まる前は、楽しみというよりも、どんな厳しい意見が言われるのかとどきどきしていたというのが正直なところでした。しかし、現在の私たちの運動が不十分だということはよくわかっていますので、どういう意識をもって改善していかなければならないのか、それを知っていくためにも金城さんの意見を真摯に受け止めなければならないと思っていました。金城さんの話は思ったよりずっと面白く引き込まれました。そして、彼女の話に対して、彼女の出入りそのものをいやがる団体があるとは全く信じられませんでした。時間があればもっといろいろな話を語ってもらいたいと思いました。ありがとうございます。

□40代 男性 
 とっても面白かったですよ。反感とかフクロだたきとか あるかいな。

□50代 男性
 金城さんが以前来られたときにも話の一端を聞いていましたが、とりわけ心を動かされたのは、@現地の実情をよく知らない私たちの認識の違いを率直に指摘して下さったことと、A基地のない糸満市出身で、基地の地元の人たちが思うことをなかなか言えなかったり行動できなかったりする事情を理解した上で反基地闘争に加わっていらっしゃるということです。@については、そういうことを言えば反発を食らうというお話には少し驚きました。「袋だたき」と表現されたことについての質問に詳しいお話がありましたが、そういう人たちが多いということに、驚きと怒りと同時に、本当に情けない気持ちに成りました。Aについては、金城さんと現地の人たちとの関係が、ちょうど私たち本土の人間と沖縄の人たちとの関係で無ければならないと感じました。本土の人間こそが沖縄の人たち以上に自分たち自身の問題として沖縄問題、基地問題を取り組まねばならないという思いをいっそう強くしました。

□50代 女性
 「沖縄がんばって下さい」の言葉に「お前ががんばれ」の所がすごく心に響きました。基地問題は日本の問題だと思います。

□50代 男性
 今日はどうもありがとうございました。「袋だたきにあう」という発言から、その卑屈にも聞こえる言葉に、ウチナンチュに対するナイチャーの差別のような圧力を感じました。伊波市長の話、とてもよかったです。僕もファンになりそうです。本を買います。ありがとうございました。 

□60代 女性 
 せっかく、反基地闘争のウチナンチューとナイチャーとの意識のずれ。ナイチャーはどうするのか?の問題提起があったのに、少しでも討論するべきではなかったかでしょうか。中央公会堂であった反基地闘争大阪集会で沖縄の弁士がはっきりと「県内外にも基地はいらない」「安保廃棄」という主張も軽くではあるがされていたことが、ナイチャーとウチナンチューとの創意でもあるのではないかと強く思っています。
しかし「平和を守る」、ウチナンチューからすれば、「どの平和を守るのか」の金城さんの一言でナイチャーの自分は、まだまだ“甘い”とガーンとなりました。
沖縄の行動に行きたいと思っています。

□50代 男性
 金城さんのお話はとてもおもしろいものでした。金城さんの怒りのエネルギーは刺激的で気分のよいものでした。感謝。

□ 女性
1.カフェに参加している人たちの活動が活発になっていることを感じました。
2.韓国にまた行きたくなりました。ツアーを計画していただきたいなあと思いました。

□50代 男性
 金城さんのざっくばらんな話はとてもわかりやすかった。「平和なのは本土だけ。全然平和ではない」本土の人間が「平和を守ろう」というが、あなたの守りたい平和はどこにあるの?という問いかけは本土の人間である私の胸に響いた。

□30代 女性
 金城さんの話はぐさぐさきました。「何をしたらいいのか」という質問は私もしそうだからです。基地問題を自分の問題としてないのだなあーとつくづく思いました。

□20代 男性
 かつて法政大の学生と話をしたことがあるのですが、その彼は“「慰安婦」はなかった”と、恨みでもあるかのように主張していました。それに対してちゃんとした反論ができず、悔しい思いをしたことがあります。基地問題に関して、「基地は必要だ」とほざく連中に対して反感を抱き、そのことが間違っていることもわかるのですが、何を言って反論すればいいか思いつかなかったりするのです。中国が攻めてくるとか、経済がどうとかいうことなどを思いつきもしないので、あらかじめ反論を考えていないのです。今回の話で、それらに対し理論的でわかりやすい反論を説明してくれて感謝します。どうも学者先生の反論は専門的すぎてわかり辛いもので。

□40代 男性
 とても貴重なお話ありがとうございました。最初は少し緊張気味でしたが、金城さんの大阪に出てきた話あたりから、ぐいぐい引き込まれて行きました。自分自身がもっているいろいろな感覚も「本土」の人間のものなんだと多々気づかされました。
伊波市長を尊敬しているという話も「追っかけ」ぽくて初々しく、そして、伊波市長がとても毅然とした方だと言うこともわかりました。金城さんの話を伝え、「本土」の人間が共有していくべきだと思いました。

□50代 
 金城有紀さんが言っていた「袋だたきにあう」という具体的内容(彼女の本音)が聞けてよかった。本音が言い合える関係にならないといけないと思う。彼女の熱い思いが伝わってきた。ウチナンチューとヤマトンチューの思いの違い、沖縄の問題、沖縄ガンバレというが本土の問題、沖縄はずっとがんばっている、沖縄連帯、沖縄の平和を守ろうと言うが、沖縄はずっと平和じゃない、過去の戦争、戦後も知らないといけないが、今は現在の基地をどうするか、etc.
出席者から“沖縄は国内植民地”ということばにはっとさせられた。

□50代 女性
 私もナイチャーですが、反日です。日本が今までしてきたことも許せないし、今もしていることも許せないと思っているので、金城さんの話はとても気持ちよかったです。それ、とてもおもしろかったです。そしてどこにいっても、自分たちの力不足を感じてしまっています。今日は元気が出ました。ありがとうございました。
ウチナンチューの率直な思いをどんどん言っていただく方が良いと思います。
韓国旅行の報告もおもしろかったです

□女性
 金城さんのお話は、とても興味深く聞かせていただきました。
 高校生のころから沖縄をはじめとする社会問題について調べたり行動されていることがよくわかり、とてもうれしい気持ちになりました。若い人がこのような活動をされていることに希望を持ったのと同時に、若い方々からも多くのことを学んでいきたいと思います。
 金城さんのお話をもっとお聞きしたいです。
 今日はありがとうございました。

□10代 女性
 沖縄問題と言って沖縄に押しつけている感じがあちらこちらであるというのは驚いた。あと、金城さんの歳を聞いても驚いた。
 驚いてばかりだったけど楽しかったし、ためになったし...参加できて本当に良かったと思う。

□30代 女性
 生の声を素直にお話くださり、ありがとうございました。
 「本土」に住んで暮らす自分は安保のことを考えなくても今までの生活が出来てきました。
ニュースを見ても意味がわからず、おもしろくないからと、バラエティ番組やドラマをよく見ていました。
 そんな自分だったので、基地問題を自分の問題としてリンクしない、無関心な感覚に共感してしまう自分もいます。
 金城さんはそんな人のことまで理解しようとしていると思います。(東京の学生の話から)。
そして対話してくれていると思います。
 無関心でいた自分がうしろめたく、恥ずかしく思います。また、今でも差別的な感覚を無意識ながら持っているだろう自分が恥ずかしくもあります。しかし、「何がそう(差別的)なのか?」には、なかなか自分で気づけません。
 そんな中、金城さんのお話はとても貴重で、かつ熱く心に迫るものでした。
 「○○問題」「がんばって」「平和を守ろう」「沖縄に連帯」「癒しの島沖縄」、教えてくれてありがとうございました。
 お互いがお互いの気持ちを受け止め、共存して真の「連帯」を言い合えるようになりたいです。
※連帯に引っかかるのは目からウロコでした。沖縄の運動を尊敬しているので、甘えて連帯したくなるのです。でも、確かに、日本の本土の問題だから、本来は逆ですね。こっちが強い運動を作らなあかんのに、です。

2010年5月2日
リブ・イン・ピース☆9+25