シリーズ 韓国・徴用工判決 安倍政権の「嫌韓キャンペーン」を批判する
(3)韓国大法院判決が明らかにしたこと(その2)
――個人請求権の認定。日韓条約で解決済みは暴論

 韓国大法院判決には、もう一つ重要な判断があります。いわゆる個人請求権問題です。日本政府は、65年の日韓条約で解決済み、個人請求権は放棄され、「最終的かつ不可逆的に解決された」と主張します。しかし、以下のように、二重の意味で国際法理を無視した暴論です。

 大法院判決は、第1に、日韓条約が植民地支配の不法・無効性をあいまいにしたまま締結された以上、植民地支配の不法・無効性と反人道性を元にした「賠償請求権」は解決されていないとしています。日韓協定で「解決されたものとする」とされたのは、未払い賃金や債権などの「財産請求権」に過ぎないという意味です。原告らの精神的被害に対する補償は含まれておらず、この点では個人請求権のみならず、国家の外交的保護権(韓国の国籍を有する私人が日本の国際違法行為によって損害を受けた場合に、韓国が国際違法行為を行った国に対して国家責任を追及する国際法上の権限)もある、と判決は明確に述べています。
 実は、日本政府も、これをかつては認めていました。1992年に衆院予算委員会で柳井条約局長が、日韓請求権協定の「財産、権利及び利益」には「慰謝料等の請求」は入っていないと認めているのです。ところが、政府もメディアもこの歴史的事実に全く触れようとしません。

 第2に、大法院判決は、「財産請求権」にしても、個人の請求権は解決していないと明記しています。政府が放棄することができるのは国家の外交保護権であって個人の権利ではない、と。これは今日の国際法の常識です。日本の最高裁でさえ、実体としての個人請求権は失われないことを認めています。日本政府もシベリア抑留者など被害者が日本人であるときには個人請求権はあると主張しながら、自らが加害者となるや請求権はないと主張します。法解釈を自己の都合に合わせてコロコロ変えているのです。

 原告によって被害の時期、経緯が異なりますが、判決はいずれの原告についても、植民地下での強制動員の事実とその被害を認め、それに対する慰謝料賠償請求を認めました。このことは重要です。
 安倍政権は、新日鉄判決に際して「朝鮮半島出身労働者」という用語を使い、原告らを自らの意志で応募したので強制連行ではないとしています。また強制連行の被害者ら全体を「自発的に募集に応じた」かのように歴史をねつ造しようとしています。徴用工の強制動員も、朝鮮人の強制連行もなかった、暴力や虐待もなかった、普通の労働者だ、と言うのです。
 しかし判決は、このような歴史のねつ造に真っ向から反駁しています。朝鮮人の動員について、(1)国家総動員法(1938年4月1日)とその下での募集計画(応募39年9月)、(2)朝鮮人内地移入斡旋要項(官斡旋1942年2月)、(3)国民徴用令(徴用44年10月)の具体的な歴史過程を辿り、「募集」「官斡旋」「徴用」へと次第に強制動員・強制連行の性格を強めていく過程を暴露しています。その上での徴用工の強制性を判断しています。

 新日鉄訴訟の原告A 43年9月頃平壌での工員募集広告に応じる (2)の時期 
 新日鉄訴訟の原告B 41年市長推薦で保局隊として動員され、日本に渡り、旧日本製鉄の労務に就く (1)の時期
 新日鉄訴訟の原告C 43年1月頃に群山部で募集に応じる (2)の時期
 三菱重工業訴訟の原告全員 国民徴用令で連行され、強制労働に従事 (3)の時期

 新日鉄訴訟の原告らは、動員の時期や経緯は異なっても、旧日本製鉄によってだまされ(大阪製鉄所で2年間訓練を受ければ技術を習得でき、訓練後朝鮮半島の製鉄所で働けるなど)応募させられる、未成年で幼い年齢で日本に渡ってからは提示条件とは全く異なる危険で重労働を強要される、月2〜3円の小遣いしか渡されず給料は強制的に貯金、最初の六ヶ月は監禁状態、外出は月1〜2度しか認められず逃亡防止で警察も含めて常に監視される、殴打などの暴力、食事抜き、賃金無支給など非人道的な扱いを受ける、などの被害実態を克明に明らかにしました。

 大法院も、4人の原告については「徴用」ではなく応募したことを認めていますが、その場合も強制動員性を認めているのです。だまされて応募し、連れていかれた先では全く約束とは違う過酷な条件で危険な重労働を強いられ、外出を制限され逃亡防止の警察の監視下に置かれました。賃金はほとんどを強制的に貯金させられ、払われませんできた。この労働を非人道的な(奴隷的)労働と認定しているのです。これら全てを日本政府・メディアは、労働者側の自己責任だと主張するのでしょうか。

2019年1月29日
リブ・イン・ピース☆9+25


シリーズ 韓国・徴用工判決 安倍政権の「嫌韓キャンペーン」を批判する
(1)韓国大法院が新日鉄住金・三菱重工業に賠償命令 日本政府と企業は判決を受け入れよ
(2)韓国大法院判決が明らかにしたこと(その1)――日本による植民地支配の違法性
(3)韓国大法院判決が明らかにしたこと(その2)――個人請求権の認定。日韓条約で解決済みは暴論