[リーフレット] 憲法って、とっても大事!
Q5 人権が認められるのは「国民」だけ?
A5 国内のすべての人、そして全世界の人に認められます

 「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」
 基本的人権を定めた日本国憲法第11条の条文です。「侵すことのできない永久の権利」という言葉がすばらしいですが、人権が保障されるのは「日本国民」だけでしょうか。つまり外国人に対しては基本的人権を認めているのかという問題があります。

 現在の憲法解釈では、憲法で書かれている権利は在日外国人も含めてすべての人に適用されるというのが定説となっています。基本的人権は人が生まれながらにして持つ権利であり、それが日本国民に限られるなどということはありえないのです。
 実際、日本国憲法の原文(英文)の権利の主体を表す部分はすべて“every person”“all people”などとなっており、権利が日本国民だけに認められるというような項目はありません。
 それだけではなく、前文で「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と、基本的人権は世界のあらゆる人々が生まれながらにして持つ侵すことのできない権利であることを謳っています。

理念と異なる実際の運用
 憲法は外国人に対しても人権を保障するとしながらも、実際の運用場面ではさまざまな「悪法」によって人権の制約がおこなわれているのが現状です。
 たとえば指紋押捺制度については、人権侵害の法律であるとして拒否運動が続けられ、1992年には「特別永住者」と「一般永住者」については廃止され、2000年には全廃されました。
 特別永住者とは、1945年の敗戦以前から日本に住んでいる旧植民地出身者とその子孫のことです。日本政府はそうした人々を強制的に「日本人」としておきながら、戦後はまた一方的に「外国人」とし、日本で暮らす上で様々な権利を剥奪してきました。
 運動の力で法改正を実現し、いくつもの権利が回復されてきましたが、2007年の入管法「改正」によって、特別永住者以外の在日外国人(旧植民地出身者含む)や入国外国人に指紋押捺と顔写真が義務づけられるなど、人権侵害と差別が続いているのです。

自民党草案では
 ここは自民党草案でも最も重大な変更を含むところです。
 まず、日本国籍を有しないものの選挙からの排除を明記しています。
成年者による普通選挙」(現行15条)→「日本国籍を有する成年者による普通選挙」(自民党草案15条)
その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」(現行93条2項)→「当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する」(自民党草案94条2項)
 自民党草案のQ&Aでは、「外国人に地方選挙権を認めないことを明確にしました。」と得意げに書いています。
 これだけでなく、全体を通じて日本国民以外を権利の対象から排除する極めて差別的な構造となっています。
たとえば、健康で文化的な最低限度の生活を保障する25条は、「すべての生活部面について」(現行)から 「国民生活のあらゆる側面において」(自民党草案)になっています。最低限度の生活の保障が日本国民だけに限るようなことになれば大変です。


はじめに
Q1 憲法と法律とはどう違うか?
Q2 日本国憲法の根本にあるものは?
Q3 「公共の福祉に反しない」とは何に反しないこと?
Q4 権利と義務とはワンセット?
Q5 人権が認められるのは「国民」だけ?
Q6 国民主権と象徴天皇制は矛盾では?
Q7 憲法第9条が放棄したのは?
Q8 日本国憲法は押しつけ?
日本の自由民権運動と世界的な人権思想の流れの中で生み出された日本国憲法
日本国憲法と自民党改憲草案の比較

[参考]
自民党日本国憲法改正草案 Q&A(pdf)
大日本国憲法・日本国憲法・自民党憲法改正草案比較表(pdf)
自民党憲法草案の批判のために(リブ・イン・ピース☆9+25)