リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
9.「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ

司会:基本的人権との関係で「公共の福祉に反しない限り」が「公益と公の秩序に反しない限り」になり、頻繁に「公益」という言葉が出てきます。

憲法学者:「公共の福祉に反しない」というのは「他人の人権を傷つけない」という意味です。「社会秩序」や「多数の利益」などという意味はありません。ところが「公益と公の秩序に反しない限り」は全く違う意味になります。現在の日本では「公益」とは「国益」という名の大資本の利益や中央政府の政策をさします。政府の政策に反対する人は「公の秩序を乱す者」と言われます。

社会科教員:身近な例で行けば、国の財政が赤字なので、社会保障を減らしたいとか、税金を上げたいとか。とにかく国が最優先

二児の母:だったら、働けない人や障がいを負った人、重い病気の人などは「社会のお荷物」のように扱われ「生きていても仕方がない」「むしろ死んだ方が国のため」という偏った考え方がでてきてしまいます。

憲法学者:自民党改憲案は「社会に役立たない人間は生きていても仕方がない」という価値観に行き着きます。そして自民党の言う社会とは効率と競争、生産性優先、利益追求が最優先される資本主義社会の価値観なのです。これはヒトラーのユダヤ人や障がい者の撲滅の思想と同様です。

社会科教員:天賦人権説を否定する理由として自民党Q&Aでは「人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統」に合うものとしています。

会社員:「我が国の伝統にあった人権」って何ですか。

社会科教員:「自由および権利には責任および義務が伴う事を自覚し、常に公益および公の秩序に反しない」そのような権利です。「義務を果たさないものには権利はない」「国家があっての国民」という考えです。人は生まれただけでは価値がない、責任を果たさなければ、社会に役立たなければ価値がないんです。

会社員:でもだれが社会に役立つかどうかを決めるんでしょう。そもそも社会にはいろいろな利害対立があります。安倍晋三は役に立ってますか。

憲法学者:自民党改憲案は13条で「個人として尊重する」から「人として尊重する」に変えられます。名前のある「個人」から「人」にかえるのは、個々の人格を否定し国に仕えるコマ・人材として扱うことです。人材として国に役立たない者は価値がないとされるのです。

  手引き9(工事中)

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち