リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
15.攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?

司会:9条について多くの人が「改憲は必要ない」と考えている一方、「攻められたらどうするのか」と不安があるのも事実です。

二児の母:私はとにかく戦争に反対です。攻められたらどうすると言われても、9条は軍隊も戦争も放棄しているのですから、武力と戦争以外で解決するんです。息子に絶対に武器は持たせたくありません。武器は持たない、戦争はしない、人殺しはしない・・・これが9条です。

憲法学者:自民党が戦争法をつくってなお憲法9条を変えたいと思っているのは、第9条がある限り、武器使用についてもいちいち屁理屈を付けなければならないし、おおっぴらには長距離ミサイルや空母も作れない。あるいは現状ではやはり戦争をするために必要な法体系がなく、たとえば海外で自衛隊員が人を殺したときに裁く軍法会議=裁判所とか、捕虜の扱いなどが規定されていないからです。つまり、9条を変えて正真正銘の戦争をしたいと考えているからでしょう。

司会:「もし攻められたら」というのに対しては?

社会科教員:中国も朝鮮人民民主主義共和国も米国から攻められること、日本がそれに協力することを一番恐れているのです。日中・日朝関係だけに限定すれば、日本がこれらの国と戦争をしなければならない、深刻な対立点は一切ないのです。戦争は、ある日突然やってくるものではなく「戦争は政治の継続」なのですから、日中・日朝関係で対立があれば、すべて外交交渉によって解決しうる問題なのです。戦争挑発しているのは日米のほうではないでしょうか。中国の反対を無視して尖閣を国有化したのも日本政府です。南西諸島や南シナ海の領有権は米国や日本とは関係ありません。当事者間で領土紛争を解決することが基本です。
 中国は経済外交を第一に考えていて、日本を攻めたり侵攻することに利益がないのは明白です。それでも「もし中国が攻めてきたらどうしたらいいのか」というのであれば、どう攻めてくるかを軍事的に具体的に検討する必要があります。でもそのような攻撃は不可能なのです。日本政府は中国による日本侵攻計画を発表していますか。中国は強襲揚陸艦で人民解放軍を上陸させ、都市を制圧しますか。東京、大阪、北九州、名古屋、札幌のどこから制圧しますか。たとえば東京を制圧するのに何人の兵士が必要ですか。一億3千人の国を漠然と攻めることはできません。

  手引き15

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち