リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
18.「緊急事態条項」は必要か

司会:「緊急事態条項」については、自民党だけでなく野党も含め多くの議員が賛成しています。

憲法学者:「改憲草案」で画かれている緊急事態条項は、大規模災害や「有事」において、首相が議会にもかけずに法律をつくったり、予算を支出したり、条約まで締結ができるというものです。この時憲法さえ無視することができます。地方自治体は国に従わなければなりません。期間は60日ですが、首相の判断でいくらでも延長することができます。つまり首相が独裁的権限をもって憲法を停止して何でもできるということです。

二児の母:これについて私は強い怒りを持っています。震災を理由に権利を侵害するなどもっての他です。安倍首相は今目の前にいる被災者・避難者の救済と生活立て直しに全力を注ぐべきです。それを放置しておいて何が「緊急事態」ですか。
 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県に対して行ったアンケートが新聞に出ていました。その結果によるとほぼすべての自治体が、国民の権利を停止したりする必要はないと応えています。政府の強権を危惧しているのです。深刻な被害を受けた自治体はむしろ、人命救助のための事前準備や長期避難のための支援が必要と答えています。原発事故時に避難の制限や屋内待避の強制などがされる危険を物語っています。

社会科教員:自然災害はまさに口実です。1933年3月に成立したナチスドイツ下の全権委任法は、立法権を政府が掌握し、ナチス政府が制定した法律は憲法に反しても有効とする法律でした。これによって市民の権利の一切が封殺され、ナチスを批判する言論の圧殺、共産主義者や社会主義者の弾圧と虐殺、ユダヤ人の虐殺へと進むことになりました。全権委任法は時限立法でしたが、結果的に33年から45年の5月まで実に11年間も続きました。ワイマール憲法が保障していた国民の諸権利を「永久停止」させて独裁政権を樹立しました。危機感を煽ることで国民の支持を取り付け「緊急事態」を発動すれば、あとはそれを100日ごとに延長し、恒常化させればいいのです。その危険は十分にあり得ます。

  手引き18(工事中)

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち