リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
12.「新しい人権」条文化の危険

司会:それでは、権利を規定する「環境権」や「プライバシー権」など「新しい人権」を条文化するというのはいいことではありませんか。

社会科教員:これは自民党が最も宣伝しているところですが、これはウソです。そもそも自民党は「憲法で人権を擁護する」という発想がありませんから、改憲案にも「環境権」や「プライバシー権」という言葉はありません。
 自民党改憲草案にあるのは「環境権」ではなく「環境保全の責務」です。環境保全への国民の協力義務が条文化されているのです。

二児の母:これは、環境保全のためと称してゴミ焼却場受け入れを強制するとか、放射能に汚染された地域に住民の帰還を強制するような意味をもつと思います。原発を推進して環境を破壊しておきながら「環境権」などということ事体がまったくのまやかしです。

憲法学者:いわゆる「プライバシー権」も、権利ではなく「個人情報の不当取得の禁止」条項です。つまり政治家の汚職やスキャンダルに対するメディアの取材・報道規制するのが目的です。彼らに新たな人権を追加しようという発想などもともとありません。どさくさに紛れて権利の剥奪と義務の追加を目論んでいるのです。

会社員:個人情報の不当取得の禁止というけれど、「マイナンバー制度」で国民一人一人にナンバーが振られ、納税だけでなく様々な個人情報が国家によって把握されてしまう。公人である政治家の「人権」は守られて、僕らは丸裸にされて管理されるなんておかしいです。

憲法学者:そもそも新しい人権については、現在の人権規定の徹底によって包含されるというのが憲法学の定説となっています。例えば、環境権は憲法第13条(幸福追求権)、第25条(生存権)に基づいて、現在のざる法の「環境基本法」ではなく、原発をも規制・禁止できるような厳しい環境法を制定すれば十分です。最高裁判所は環境権を憲法が保障する基本的人権としては承認していませんが、憲法学では、環境権は通説的位置にあるといって差し支えありません。(幸福追求権における「包括的人権」論)。

  手引き12(工事中)

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち