シリーズ 「新冷戦」に反対する 〜中国バッシングに抗して
はじめに

今、「新冷戦」を阻止することが重要

 今、米国と中国の対立が激しくなり、「新冷戦」とも言われています。11月の米国大統領選挙を前に、トランプ大統領が中国との対決姿勢を強め、偶発的な軍事衝突さえ起こりかねない危険な状況です。
 メディアの報道では、米中を同列に扱い、大国の「覇権争い」として描いています。しかし、私たちは「どっちもどっち」という見方には反対です。
 「新冷戦」を作り出そうとしているのは米国の側であり、EUや日本と手を組んで、中国を軍事的・経済的に封じ込めようとしています。これに対し、中国の側は「新冷戦」にはっきりと反対しています。中国政府は繰り返し、「異なる制度の平和共存の道を探るべき」、「自らが新冷戦に関与するつもりはない」と態度表明しています。
 「新冷戦」を阻止するために、また「新冷戦」から実際の戦争に進むことを阻止するために必要なことは、米国の側に中国との対決をやめさせることです。

中国を意図的に悪く描くフェイク情報の数々
 しかしながら、中国を意図的に悪く描く歪んだ情報が、日本でも広く流布されています。そうしたフェイク情報に基づく中国嫌いの感情が、米の挑発的な軍事行動や、日本のそれへの協力を支持あるいは容認しかねないことを、私たちは危惧します。
 世論調査では、反中国・嫌中国の意識が7〜8割を占めています。この文章を読まれている人の中にも、「中国が嫌い・怖い・信用できない」と思っている人は少なくないと思います。
 中国に関して、日本では以下のような宣伝があふれています。
・新型コロナウイルス感染症の発生を隠蔽し、世界をコロナ禍に巻き込んだ。
・マスク外交・医療支援で世界の支配を狙っている。
・世界がコロナ禍で苦しんでいる時に、南シナ海への海洋進出を進めている。
・「日本公有の領土」である尖閣諸島の海域に侵入を繰り返している。
・香港では「国家安全維持法」で自由と民主主義を否定し人権を蹂躙している。
・新疆ウイグル地区で強制収容所に100万人を拘束している。
・ファーウェイやTikTokで情報を盗んでいる。
・一帯一路で発展途上国を債務奴隷化している。

‥‥などなど。
 このように、日本政府やメディアによって垂れ流されてきた「中国脅威論」に、多くの人々が影響を受けています。私たちは、それこそが危険だということを訴えたいのです。
 戦争をやろうという勢力は、その前段階で、敵を徹底的に「悪」として描きます。イラク戦争(2003年)の前には、「フセイン独裁」や「大量破壊兵器危機」が宣伝されましたが、戦争後、大量破壊兵器などなかったことが明らかとなり、米国政府もそれを認めました。湾岸戦争(1991年)の際には、「ナイラ」という少女が、クウェートの子どもたちがイラク兵に虐殺されたと米国議会で証言しましたが、この少女が実は米国内に住むクウェート大使の娘であり、クウェートに住んだこともなかったことが、後に暴露されました。こういうのは常套手段です。
 今、「中国脅威論」を無批判に受け入れることは、こうした歴史を繰り返すことになるのです。

中国に対する誤った見方に抵抗し、「新冷戦」に反対しよう
 このシリーズでは、そういったフェイクを批判するため、中国について客観的な情報を集めて紹介しながら、中国を「悪」と描く宣伝に抵抗したいと思います。広く流布されている、中国に対する一面的で誤った見方に反論していきます。
 そうすることで、「新冷戦」反対の世論、米国トランプ政権による中国への戦争挑発と、日本の菅政権のそれへの協力に反対する世論を、作っていきたいと思っています。
 「新冷戦」とは、政治、経済、外交、軍事など、あらゆる分野で中国を敵視する包括的な対中封じ込め政策であり、中国政府の打倒にさえ言及する危険なものです。私たちは、現在の米国の力の限界と中国の経済力や人口などを考えた場合、アフガニスタンやイラクのように全面的な戦争に突入する可能性は低いと思いますが、偶発的軍事衝突の危険や東アジアの軍事的・政治的緊張を高めるものとして絶対に許してはならないと考えます。

2020年10月4日
リブ・イン・ピース☆9+25

シリーズ 「新冷戦」に反対する 〜中国バッシングに抗して
(No.58)「汚染水放出への抗議」を利用した反中国宣伝をやめよ
(No.57)今度は「中国がキューバに米国盗聴施設を建設」?!
(No.56)米国の反中プロパガンダの新手の手法 中国の対抗措置に逆ギレし、中国を悪者に仕立て上げる
(No.55)中国の「債務の罠」プロパガンダのデタラメ
(No.54)「中国軍事費脅威論」の詐欺的手法 はるかに急拡大する米欧日諸国の軍事費
(No.53)番組紹介 「台湾海峡の記録」(中国テレビ「国家記憶」)
(No.52)日中国交正常化50周年を平和と友好の出発点に(下)
(No.51)日中国交正常化50周年を平和と友好の出発点に(中)
(No.50)日中国交正常化50周年を平和と友好の出発点に(上)
(No.49)国連ウイグル人権報告書を批判する(下)
(No.48)国連ウイグル人権報告書を批判する(中)
(No.47)国連ウイグル人権報告書を批判する(上)
(No.46)本の紹介「撫順戦犯管理所長の回想」(下)
(No.45)本の紹介「撫順戦犯管理所長の回想」(上)
(No.44)米の経済的・政治的支配からの脱却を目指すGDIフレンズグループ(下)
(No.43)米の経済的・政治的支配からの脱却を目指すGDIフレンズグループ(上)
(No.42)気候危機との闘い(下) 「ネットゼロ」でごまかす先進諸国/具体的対策を打ち出す中国
(No.41)気候危機との闘い(上) 「共通だが差異ある責任」を巡る、先進諸国と中国・途上国の闘い
(No.40)中国の軍事力を誇大宣伝する国防総省報告書
(No.39)「大陸間・極超音速兵器実験」は米のプロパガンダ
(No.38)情報機関報告でも破綻した米国の「コロナ研究所漏洩説」
(No.37)4空母による台湾沖での大軍事演習を糾弾する メディアは対中脅威を煽る悪質な宣伝をやめろ
(No.36)「一帯一路」は覇権主義なのか(その5) 植民地支配・収奪からの脱却を目指す世界史的事業
(No.35)「一帯一路」は覇権主義なのか(その4) 執拗な「一帯一路」敵視キャンペーンに反論する
(No.34)「一帯一路」は覇権主義なのか(その3) 「債務の罠」は米国とメディアが作り出した虚像(2)――スリランカの例
(No.33)「一帯一路」は覇権主義なのか(その2) 「中国による債務の罠」は米国とメディアが作り出した虚像(1)――ザンビアの例
(No.32)「一帯一路」は覇権主義なのか(その1) コロナのもとで真価を発揮した「一帯一路」
(No.31)日中の「4項目合意」(14年11月)以降、尖閣周辺は緊張していない
(No.30)「台湾有事」プロパガンダと日本軍国主義の新段階(3)
(No.29)「台湾有事」プロパガンダと日本軍国主義の新段階(2)
(No.28)「台湾有事」プロパガンダと日本軍国主義の新段階(1)
(No.27)(補論)米国立衛生研究所が驚くべき調査報告を発表 〜武漢以前に米国内で感染者が発生〜
(No.26)バイデン「武漢ウイルス研漏洩説」のウソ・デタラメを暴露する(下)
(No.25)バイデン「武漢ウイルス研漏洩説」のウソ・デタラメを暴露する(上)
(No.24)貧困撲滅の闘い(下)──産業育成、移住、生態保障、教育、社会保障を組み合わせた総合政策
(No.23)貧困撲滅の闘い(中)──共産党の指導の下、全土から貧困地域の自立化へ支援
(No.22)貧困撲滅の闘い(上)──広大な国土と多民族の国での困難な課題の遂行
(No.21)中国海警法を口実にした海上保安庁の「第二自衛隊化」をやめよ
(No.20)バイデンも「中国ウイルス」、反中国を大宣伝 武漢調査団は研究所漏洩を否定、コロナ起源調査の継続を求める
(No.19)「ウイグル・ジェノサイド」のデマ・ねつ造を批判する(まとめ)
(No.18)「ウイグル・ジェノサイド」のデマ・ねつ造を批判する(下) 「強制収容所」も「強制労働」も根拠なし

(No.17)「ウイグル・ジェノサイド」のデマ・ねつ造を批判する(中) 「大量虐殺」したはずのウイグル族人口がなぜ漢族より増えているのか?――統計と証言のねつ造

(No.16)「ウイグル・ジェノサイド」のデマ・ねつ造を批判する(上) 狙いは対中封じ込め――制裁発動、新疆綿使用企業ボイコット、北京五輪ボイコット
(No.15)WHO武漢調査団と執拗な反中国キャンペーン
(No.14)香港国家安全法(下)――特殊な歴史的経緯で生まれた「一国二制度」における特権と制約
(No.13)香港国家安全法(中)――目的は、外国と結託した政権転覆(香港の分離独立)および破壊活動の防止
(No.12)香港国家安全法(上)――西側帝国主義に蹂躙されてきた被抑圧国の視点から捉える
(No.11)中国の「ゼロコロナ」政策に学ぶべき(補) 「社区」の歴史――住民の「サービスの受け手」と「自発性」を両立
(No.10)中国の「ゼロコロナ」政策に学ぶべき(下) 「社区」「居民委員会」にみる「中国型民主主義」
(No.9)中国の「ゼロコロナ」政策に学ぶべき(中) 『武漢支援日記 コロナウイルスと闘った68日の記録』より
(No.8)中国の「ゼロコロナ」政策に学ぶべき(上) 河北省石家荘市でのコロナ感染に対する徹底した検疫政策
(No.7)新疆ウイグル──貧困対策、テロ活動防止のための教育施設
(No.6)モンゴル語禁止はウソ 社会経済活動に不可欠な「公用語」教育
(No.5)「尖閣諸島への中国の脅威」は本当か?(下)
(No.4)「尖閣諸島への中国の脅威」は本当か?(上)
(No.3)南シナ海領有権争いを煽っているのは米国 中国ら当事国は平和的解決を模索
(No.2)南シナ海で軍事挑発を繰り返しているのは米国(下)
(No.1)南シナ海で軍事挑発を繰り返しているのは米国(上)